子どもの学力が高いのに出現率が低い県 埋もれた才能をどう発掘する?

 次に取り上げたいのは、地域格差です。最高学府への到達チャンスは、地域によって大きく違っています。地方にお住まいの読者も多いと思いますが、わが県から東大・京大合格者が出る確率はどれくらいか、都会と比してどうなのか、という関心もおありでしょう。

 今年春の東大・京大合格者を都道府県別に集計し、各県の推定18歳人口(3年前の中卒者数)で割って、合格者の出現率を計算してみました。図3は、それを地図にしたものです。

 全国値は0.49%ですが、県別にみると1.91%から0.08%までの開きがあります。最高の奈良では52人に1人ですが、最低の沖縄では1250人に1人です。違うものですねえ。

 色が濃い地域は、関東や近畿の都市部に多くなっています。北陸も強い。私の郷里の鹿児島にも色がついていますが、これはラ・サール高校があるためでしょう。

 しかし数としては、合格者の出現率が0.4%(250人に1人)に満たない県が多く、東北は真っ白です。この中には、子どもの学力トップの秋田も含まれますが、「地方に埋もれた才能」の存在を感じます

 最後に、各県からの合格者の出現率を、公立と国私立に分けて出してみましょう。高校の多くは公立ですが、自分の県の公立高校からどれくらいの確率で東大・京大合格者が出ているか。各県の合格者数を公立と国・私立に分け、双方の卒業者数で割った出現率にしてみました。表1をご覧ください。

 赤字の県は、公立より私立が強い県です。関東や近畿の都市部では、このタイプが多し。奈良の国・私立高校からは、5.93%(17人に1人)の割合で東大・京大合格者が出ています。東大寺学園や西大和学園といった、超名門校があるためです。

 地方では、「公立>国・私立」の県が多くなっています。黄色マークは合格者出現率が0.5%超ですが、北陸3県の公立は強い。子どもの学力上位の県ですが、それが上手く吸い上げられています。

 公立高校からの合格者出現率が最も高いのは、京都です。1.21%と、他県の公立校と比して飛び抜けて高くなっています。京都は小学区制の伝統が長く、公立高校のいわゆる「学校格差」が小さいためと思われます。

地域間不均衡をなくすために優秀な若者のUターンを促そう

 以上、東大・京大という最高学府への到達チャンスの分布をラフに描いてみました。分かったのは、(1)公立と国・私立の格差、(2)都市と地方の格差です。誰もが知っていることですが、データにするとインパクトがあります。

 (1)合格者が国・私立に寡占されている状況は公正といえるか、(2)地方に埋もれた才能が多いのではないか、という問題に言い換えることもできます。しかし、双方とも変わる兆しは出てきています。(1)については前述しましたが、(2)についても、給付型奨学金や高等教育の学費無償の拡大により、地方のハイタレントの移動も促進されるでしょう。

 むろん、その「移動」は地方から都市という一方通行であってはならず、都会の大学で学んだ知識や技術を郷里の発展に活かすといった、「双方向」のものでないといけません

 東京への一極集中是正のため、都内23区の私大定員を抑制する動きが出ていますが、私はこれをあまりよく思っていません。18歳時の若者の移動(地域交流)を抑えるのは、いかがなものかと。なすべきは、都会に出てきた若者のUターンを促すことです。ここで注目した最高学府で学んだチカラが全国に拡散するならば、わが国の地域間の不均衡発展も、大きく是正されるでしょう。福井県と明治大学が、学生のUターンを促すべく、就職支援の協定を結んだそうですが、こういう取組がもっと広まってもいいと思います。

 図3の日本地図の模様は、ぜひとも変わってほしいと願います