現時点では「国・私立有利、公立不利」が明らか

 それはさておき、関心が持たれるのは「最高学府に入るのは誰か?」です。東大に入るには、幼少期から塾通いをし、私立の名門一貫校に入るのが有利といわれます。しからば、東大・京大合格者の多くは私立(国立)高校出身者と思われますが、統計でみるとどうでしょう。

 毎日新聞社の『2017年版 大学入試全記録「高校の実力」完全版』という資料から、今年春の全国4800高校の東大・京大合格者を知ることができます。私が集計したところ、その合計は5881人で、内訳は国立が343人、私立が2801人、公立が2737人です。国・私立の出身者が半分以上を占めています。高校生全体では公立の生徒が過半数であるにもかかわらずです

 これだけでも国・私立の優位性は明らかですが、グラフではっきり「見える化」すると、図2のようになります。今年春の東大・京大合格者と高校卒業生の内訳を対比したものです。

国立附属校の存在意義が見直され、有利さが変わる可能性がある

 ご覧のように、両者の内訳はかなり違っています。私立高校のシェアは高卒者では32.0%ですが、東大・京大の合格者では47.6%です。これによると、私立高校からは期待値の1.5倍の確率で最高学府の合格者が出ていることになります(47.6/32.0≒1.5)。国立高校はもっとすごく、通常の19.3倍の輩出率です(5.8/0.3≒19.3)。公立高校からの輩出率は0.7で、通常の期待値(1.0)を下回っています

 ちなみに、東大・京大合格者上位20校のうち公立はわずか4校です。70年代や80年代の頃は、公立高校が健闘していましたが、現在では国・私立の寡占度が強まっています。入学・在学に多額の費用(準備の通塾費も含む)がかかる国・私立校に、最高学府への到達チャンスが寡占されるのはアンフェアという見方もあります。90年代の初頭、私立校からの東大入学者の枠を制限すべきという議論もありました。

 今後、国・私立の寡占がますます顕著になってきたら、こういう議論が再燃するかもしれませんね。なお、国費で運営している国立学校がエリート化するのはおかしいということで、国立小学校の入学者選抜は「くじ引き」にすべしという案も出ています

 国立の小・中・高校の役割は、大学の教育学部の研究や教員養成に協力することです(調査や実験のサンプルになる、教育実習を受け入れるなど)。にもかかわらず、在籍の児童・生徒が富裕層に著しく偏しているというのは、あまり好ましいことではありません。

 こういう動きがあることから、図2で示した勢力図は変わる可能性がある、ということを申しておきましょう。