「地元なら」という親も。大学の地方分散は解決の一手

 しかし、それだけではないでしょう。他の地方県もそうですが、地元に大学がない(少ない)ことも大きいと思われます。「女子の場合、自宅外(県外)に出したくない」「コストのかかる自宅外進学は男子のみで、女子は自宅通学にさせたい」。こういう考えの親御さんも多いでしょう。ゆえに、地方の女子の大学進学率は低くなると。

 大学入学の枠がどれほど用意されているかを、47都道府県別に計算することができます。今年春の東京都内の大学への入学者は15万415人で、18歳人口(10万5353人)をはるかに上回っています。東京では18歳人口全員が大学に入っても、まだイスが有り余る計算になります。対して鹿児島では、18歳人口4人に1個しかイスがありません(県内大学入学者3598人、18歳人口1万5974人)。

 東京の大学収容力は142.8%、鹿児島のそれは22.5%という数値で測られます。言わずもがな、この指標は各県の大学進学率と非常に強く相関しています。それは、男子よりも女子で顕著です。横軸に大学収容力、縦軸に女子の大学進学率をとった座標上に、47都道府県を配置した相関図にしてみましょう(図3)。

 大学収容力が高い県ほど、女子の大学進学率が高い傾向にあります。相関係数は+0.8349にもなります。大学収容力が際立って高い東京と京都を外れ値として除外しても、相関係数は+0.7を超えます。大学が多く自宅通学が容易な県ほど、女子の大学進学率が高い。分かりやすい話です。

 大学の地方分散を進めることは、女子の高等教育機会の均等に寄与するかもしれません。あるいは、女子が都市部の大学に進学するのを容易ならしめる条件を整えるのも一つの手です。東京大学は女子学生の家賃補助を行っていますが、これなどは妙案だと思います。地方の才女を呼び寄せる上でも有効でしょう。

愛娘にどんな期待をしているか。今一度見直してみよう

 東京医大の問題を皮切りに、教育分野のジェンダー格差のデータを作ってみましたが、ちょっと掘るだけで出るわ出るわ…。日本の男女平等指数が無様な位置にあるのはよく知られていますが、そういう社会のクライメイトは、女子生徒の将来展望を暗いものにします。

 ただ、私が言うのはおこがましいですが、親自身がそれに加担している可能性も否定できません。理科で良い成績をとることを期待されていると答えた生徒の割合は、女子より男子で高いそうです(村松泰子『学校教育におけるジェンダー・バイアスに関する研究』東京学芸大学 2002年)。子どもは親や教師の腹の内を敏感に察知するものです。女の子がいる親御さんに申したいのですが、愛娘にどのような眼差し(期待)を向けているか、内省してみてください。「女の子だから…」と口にするのはもちろん、心の中でつぶやくのも禁止すること、それだけでも事態はだいぶ変わるかと思います。