自分の将来に蓋をしてしまう女子学生。しかし都市部では男女逆転も

 こうした教育期待の差は、当の子どもたちの意識にも投影されている可能性があります。大学・大学院まで進学したいと答えた15歳生徒の割合は58.6%ですが、性別にみると男子が64.4%、女子が52.8%と、10ポイント以上の差があります(OECD「PISA 2015」)。これは日本のデータで、われわれからすれば違和感はありませんが、国際的にみたら異常なんですよね。

 横軸に大学・大学院進学志望率、縦軸にジェンダー差(女子-男子)をとった座標上に、調査対象の58か国を配置すると、図2のようになります。

 日本は国際的にみて、15歳生徒(高校1年生)の教育アスピレーションが高い部類に入ります(横軸)。しかし、縦軸でみると特異性が明らかです。女子の高等教育進学志望率が男子より低い国って、日本とドイツだけじゃないですか(値がマイナス)。

 ドイツはほぼ同じくらいですが、女子が男子より10ポイント以上低いのは、まぎれもなく日本だけです。女子の努力をこき下ろす風潮、賃金や昇進チャンスの性差、親や教師の教育期待の歪み…。若き女子青年は、こういうことを鋭敏に察知して、自身の将来に自ら蓋をしているのかもしれません。教育社会学の用語でいうと「自己選抜」です。図2に示される現実は、ジェンダーに関わる諸課題をわれわれに突き付けています。

 今みたのは大学への進学を志望する生徒の割合ですが、実際の進学率にも性差があります。今年春の18歳人口ベースの大学進学率は53.3%です(4年制大学入学者を推定18歳人口で割った値)。性別にみると、男子が56.3%、女子が50.1%となっています。10月の上旬に、朝日新聞で大学進学率のジェンダー差の特集(『女子の大学進学率、男子と格差 45道府県で下回る』)が組まれていたので、ご存知の方も多いでしょう。

 ただ地域によって様相は違っており、東京では男子より女子が高いのです(男子72.2%、女子73.2%)。私の郷里の鹿児島では、男子が43.4%、女子が34.1%と、男子のほうが明らかに高くなっています。鹿児島の土地柄じゃないのか、と言われるかもしれませんね。本県の前知事が「三角関数を女子に教えて何になる」と発言したことも記憶に新しい。