教育社会学者の舞田先生が統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。第63回では、女の子の教育について考えます。仕事も家事も男女平等が当たり前という考え方で育ってきたDUAL世代。教育において男女で差をつけるなんてと思うかもしれませんが、実際は家庭においても、子どもたちの意識においても男女差があることが分かりました。国際的にも残念なその状況を改善する糸口はどこにあるのでしょうか。

医大の不正問題から見えた 女子への期待の低さ

 こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。東京医大の入試の不正問題が、世間の耳目を集めています。女子をなるべく入れたくないがために、女子受験生の点数を操作していたとのことです。医師を志す女子の努力をあざ笑うもので、断じて許し難し。

 2015年の統計によると、日本の医師の女性比率は20.3%で、OECD加盟国の中では最も低いのですが(OECD「Health at a Glance 2017」)、それは「作られた」ものであることが分かりました。

 これでは、「どうせ頑張ったって…」と塞ぎ込む女子が出てくるでしょう。彼女らの将来展望に蓋をすることに他なりません。しかるに、それに加担しているのは入試の不正だけではありません。親や教師が、女の子にどういう眼差しを向けているかも反省しないといけません。

 皆さんは、お子さんにどの段階の学校まで進ませたいと思っていますか。大学まで行かせたいという親御さんが大半でしょうが、「経済的に1人しか無理なんで、お兄ちゃんだけ」という家庭もあるでしょう。男女で、教育期待に差をつけていることはないか。

「大学へ行かせるか」 現代の親ですら男女差をつけている

 残念ながら、それがあることはデータで確かめられます。図1は、「中学生の男女の子がいた場合、どの段階の学校まで進ませるか」という問いへの回答をグラフにしたものです。NHKの有名な「日本人の意識調査」のデータで、左は初回の1973年、右は最新の2013年の結果です。

 ご覧のように、男女で回答の分布がかなり違っています。70年代前半では、「大学・大学院まで」という回答は、男子では70.2%ですが、女子では23.1%しかいません。高度経済成長を経て大学進学率が高まったとはいえ、増分の多くは男子によるもので、「女が大学なんて…」という風潮が強かった頃です。女子はどうせ家庭に入るのだから、税金を費やして高等教育を受けさせるのはムダだという、「女子学生亡国論」も囁かれていました。

 今なら、こんなことを言ったらフルボッコです。40年の時を経た2013年では、教育期待の性差はかなり縮まりました。80年代半ばの男女雇用機会均等法制定、今世紀以降の男女共同参画施策、ジェンダー意識の啓発などの成果でしょう。しかしながら、完全に差がなくなったわけではありません。大学まで行かせたいという回答は、男子が77.0%、女子が60.4%で、未だに15ポイント以上の性差があります