教科によって異なる得意度 国語は会話量との関連が明らか

 上記は、勉強全体の得意度とのクロスですが、勉強といってもいろいろな教科があります。先ほど紹介した『AERA』の記事では、「関係の貧困」と読解力の関連が強いことがいわれていますが、そうであるならば、国語の得意度との相関が強そうですね。

 国立青少年教育振興機構の調査では、9つの教科を提示して、それぞれが得意かを訊いています。座学の教科(国語、社会、算数、理科)について、得意と答えた児童の割合を計算してみました。家族との会話頻度による4グループの得意率を、折れ線のグラフにすると図2のようになります。

 算数・社会・理科は、家族との会話頻度との間に明瞭な相関関係は見られません。理科は、ほぼフラット(無相関)です。家庭の年収を一定化しているためでしょう。

 しかし国語だけは、左上がりのクリアーな傾向が出ています。家族とよく会話するグループほど、当該教科が得意な児童の比率が高くなっています。これはあくまで自己評定で、国語の実際の学力は別物ではないかと思われるかもしれませんが、国語の平均点との相関関係も報告されています(文科省『全国学力・学習状況調査』2018年度)。

 国語だけは、経済的貧困よりも「関係の貧困」の影響が強いようです。冒頭の『AERA』の記事で言われている通りですね。読解力や文章力というのは、座学の学習だけで身に付くものではありますまい。他者と向かい合って言葉を交わす、生きた「実践」で鍛えられるものです。

ネット全盛時代だからこそ、リアルに会話をする経験が必要

 最近では、SNSやLINEを介したコミュニケーションの比重が増していますが、細切れの単語や隠語を多用する形式では、長めの文章を書く訓練にもなりません。

 人間は、しょせんはアナログ動物です。リアルなコミュニケーションの効能も見直したいですね。言語能力の形成途上にある年少の子どもの場合は、とくにそうです。小さい子どもは、主な生活の場は家庭で「重要な他者」は家族(親)ですので、親子の会話が重要となります。そういえば、先月の日経DUALに「低下する子どもの読解力『読書よりも親子の時間を』」という記事が出ていましたよね。筆者は、名門・麻布中高の国語の先生です。

 子どもに問いを発し、それを咀嚼(読解)させ、理性のツールの言語で応答させる。こういう経験を意図的に積ませたいものです。それが為される場は、かしこまって向かい合う勉強部屋である必要はありません。食卓をはじめとした、日々の自然な生活の場でいいのです。