教育社会学者の舞田先生が統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。第60回の冒頭では、バブル期とロスジェネ世代の所得を比較。バブル期にキラキラしていた40代と、今の40代とでは所得に驚くべき差があるようです。舞田先生は、妻の働き方や地域による所得の差、共働きを成り立たせるのには欠かせない保育についても言及します。これから教育費の負担が増してくるDUAL世代の夫婦がどう働いていくか、ぜひ参考になさってください。

バブル期の40代所得は今より50万円多かった!

 こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。読者の皆さんは私と同世代、70年代生まれの方が多いと思いますが、子どもの高校・大学進学を見据える時期になってきました。

 お盆休みの今、帰省した実家で、重みを増してくる教育費が話題になることもあるでしょう。現在の収入を聞かれ答えてみると、「そんなに少ないのか」と親はびっくり仰天するかもしれません。

 われわれの親がアラフォーだったのはバブル期の頃です。当時と比したら、収入が目減りしているのは肌感覚でも分かります。感覚では心もとないので、ちゃんとデータを出してみましょうか。

 総務省の『就業構造基本調査』という資料に、有業者の所得の度数分布表が載っています。この表から、40代前半男性の所得の中央値(Median)を出してみます。中央値とは、データを高い順に並べたとき、ちょうど真ん中にくる値です。フツーの人の稼ぎを知る代表値としては、平均値よりも中央値がベターです。前者は、一部の極端な値に影響されますので。

 原資料の度数分布を累積相対度数(%)にし、50ジャストの値を按分比例で推し量りました。算出された中央値は、1992年が524万円、2017年が472万円です。この四半世紀で、アラフォー男性の所得は50万円以上減っています

 これは全国値ですが、労働者の所得は地域によって異なります。47都道府県別にみると、この四半世紀でどの県も所得が減っていますが、全県の動きを上から俯瞰すると、列島貧困化と呼ぶべき現象が浮かび上がります。同じやり方で全県の40代前半男性の所得中央値を出し、500万円を超える県に色を付けた地図にすると、図1のようになります。

500万円超えはわずか5都県

 1992年では20の都府県で所得中央値が500万円を超えていましたが、2017年ではわずか5都県です。最近では、西の大都市の大阪もこのラインを超えていません。

 その代わり低所得の県が増えており、2017年では400万円に満たない県が11あります。キツイですねえ。これは税引き前の所得ですので、税引き後の年収で見たらもっと悲惨な事態になります。「失われた25年」にかけて、子育て期の男性の所得は大きく失われてしまいました。

 2017年の40代前半といえば、世紀の変わり目の超氷河期に大学を出たロスト・ジェネレーションです。この世代が40代前半のステージに達したことの影響が大きいでしょう。新卒時に正規就職が叶わず、ずっと非正規に滞留したままの人、キャリアや昇給が順調にいっていない人が数多くいます。

 少し上の団塊ジュニア世代と同じく人数的に多いですので、管理職のポストが足りず、昇進が頭打ちになっていることもあるでしょう。一昔前なら、40代になればそれなりの役職に就く人も少なくなかったと思いますが、最近はそうではないと。

 また、長らく続いてきた年功賃金が薄れているのかもしれません。ざっと考えて、世代の要因、人事管理の変化の要因、という2つに大別できるかと思います。