20年間で日本の「未婚の母」は5倍に増加

 ただ日本でも、一昔前に比したら未婚のシングルマザーは増えています。『国勢調査』のデータによると、母子世帯(母と未成年の子からなる世帯)の母親で配偶関係が「未婚」の者は、1995年では2万4396人でしたが、2015年では11万3562人となっています。この20年間で5倍近くの増加です。最近では母子世帯の母親の15.0%、7人に1人が未婚のシングルマザーです。

 これは全国の数値ですが、地域差もあります。母子世帯全体のうち、未婚シングルマザーの世帯が何%か。47都道府県の数値を計算し、ドットを配置したグラフにすると図1のようになります。

 この20年間にかけて、全国的に未婚シングルマザー世帯率が上がっています。1995年では全県が10%を下回っていましたが、2015年では大半の県がこのラインを超え、東京・沖縄・大阪は2割を超えます。最高の東京では24.4%、母子世帯の母親の4人に1人が未婚者です

「伝統的家族観」優先のため、寡婦控除を受けられない「未婚の母」

 未婚のシングルマザーは増えており、もうちょっとしたら「母子世帯=夫と離婚した母と子の世帯」というイメージは覆されるかと思います。ただ現時点で問題なのは、未婚のシングルマザーに対する支援が手薄なことです

 6月の法令改正で、保育料の軽減や職業訓練給付金の増額などが受けられるようになりましたが、所得税や住民税の控除は見送られています。理由は、所得税法上の「寡婦」の定義を変える必要があるからとのこと。政府関係者は「寡婦に未婚を加えると、結婚して出産するという伝統的な家族観の変化を主導する話になりかねない」(2月4日、東京新聞「ひとり親支援 未婚に拡大 6月から政令改正」)と言っていますが、「伝統的な家族観」が時代にそぐわなくなっていることを認識すべきです

 母子世帯の母親の平均年間就労収入は200万円ですが、未婚の母に限ると177万円と少なくなっています(厚生労働省『全国ひとり親世帯等調査』2016年度)。つまらない固執で、子どもの貧困を持続させてはなりますまい。厚労省も懸念は持っているようで、未婚の母も寡婦控除に加える制度改革が検討されています