教育社会学者の舞田先生が統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。第56回のテーマは子どもの虫歯です。毎日の歯磨きタイムは子どもとのバトル、という家庭も多いかもしれませんね。虫歯になりやすいのはどんな子なのでしょうか。舞田先生が鋭く分析しました。

歯科医の増加と意識の高まりで虫歯児率は減っている

 こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。新年度になりましたが、学校に通わせているお子さんは、今月か来月中に健康診断を受けるかと思います。学校保健安全法第13条で定められている、法定健診です。

 何らかの疾患が見つかる子どもも少なくありませんが、その代表格は虫歯です。子どもと虫歯というのは、切っても切れない「カレーライスと福神漬け」のような間柄。いつの時代でも子どもは甘い菓子を好み、歯磨きは億劫がります。歯医者さんのあの独特の匂い、「キュイーン」という忌まわしい音を経験したことがない人はほぼ皆無でしょう。

 とはいえ昔と比べると、虫歯のある子どもの率は少なくなっています。図1は、学校の歯科検診で未処置の虫歯が見つかった子どもの割合の変化です。検診を受けた児童・生徒のうち、「すぐに歯医者さんに行きなさい」と言われた子が何%かです。

 小学生の虫歯児率は、戦後間もない1950(昭和25)年では4割でしたが、60年代初頭までにかけて8割に上がります。

 チョコレートの消費需要が高まった時代と重なりますね。戦後初期は食べ物も碌にありませんでしたが、この頃になって外来のお菓子が出回るようになりました。それまでお腹をすかせていた子どもは、貪るようにそれを食したことでしょう。団塊世代の方は、この辺りの事情はよくお分かりかと思います。

 その後も、子どもの嗜好にマッチした食べ物がどんどん出回り、小学生の虫歯率8割の時代が続きます。高度経済成長期は、子どもの虫歯の時代でもありました。

 今と違って、歯医者さんが少なかったこともあるでしょうね。1960年の歯科医師数は3万3137人、小学生1000人あたり2.6人です。2016年は10万4533人で、小学生1000人あたり16.1人(厚労省『医師・歯科医師・薬剤師調査』)。現在ではコンビニより多く、供給過剰が指摘される歯医者さんですが、昔はそうではなかった。歯科診療所が全くない無医地区も珍しくありませんでした。

 しかるに70年代後半から、子どもの虫歯率は滑り台のごとく急降下します。小学生でいうと94年に半数を割り、2017年では24%です。各種の啓発により、オーラルケアに対する保護者の意識が高まっているためでしょう。虫歯予防のため、フッ素液でうがいをさせる学校も増えているとのこと。「為せば成る」。子どもの虫歯率の時代変化は、それを教えてくれる最良の事実といえましょう。

 さて、ここからが本題です。「学校によって、虫歯が見つかる子どもの率が全然違う」。学校で歯科検診をしている歯医者さんの間で、こういう声がよく聞かれます。虫歯の子どもは昔に比して大きく減っていますが、「虫歯になりやすいのは、どういう子か」を問う必要がありそうです。