お年寄りに席を譲れるのは、体験が豊富な子

 中ほどが厚いノーマル分布になっています。これをもとに、体験活動のレベルを「低」「中」「高」の3群に分けましょう。20点台を低、30点台を中、40点以上を高とすると、人数比が「2:6:2」となり、きれいな配分になるかと思います。

 フツーの家庭の4年生をこのやり方で3群に分け、道徳行為、自己イメージ、勉強の得意度がどう違うかを比べてみます。まずは道徳行為です。7つの項目について、最も強い肯定の回答をした子の割合(%)を拾ってみました。

 赤字は3群の中で最も高い数値ですが、いずれも体験活動「高群」の肯定率がマックスです。席を譲ること、悪いことをやめさせることの肯定率は、低群と高群では大きく違っています。

 京王線車内で、障害者に優先席を譲るのを拒否した若者がいたそうですが(「優先席の劣悪マナーは看過できないレベルだ」東洋経済オンライン、2018年2月15日)、おそらくは他人のケアをした経験がないのでしょう。

 昨年に公示された新学習指導要領では、生きた「体験」による道徳教育が志向されています。道徳が教科となり、当局の検定教科書が使われることになりましたが、言わずもがな、「道徳性」「道徳的判断力」「道徳的心情」というのは、教科書の素読で身につくものではないのです

体験スコアが高い子は、自己評価も高い

 次に、自己イメージと勉強の得意度です。関連する15項目を取り出し、肯定率を群ごとに計算してみました。

 友達の多さ、勉強・体力への自信、自尊心とも、体験活動のレベルと直線的な相関関係にあります。体力の自信は、低群が7.3%、高群が40.2%と5倍以上違っています。家に籠っている子と、外を駆けずり回っている子ですから、当然ですよね。体験活動が多い子は行動範囲が広いためか、学校外の友人も多いようです。

 自尊心とも関連していますね。お手伝いや他人のケアで集団生活に貢献した経験、崇高なものに触れた経験が基盤になっていることは、想像に難くありません。

 勉強が「とても得意」という子の割合も、低群が10.9%、中群が13.9%、高群が16.5%と、リニアな傾向にあります。教科ごとにバラしても同様です(下段)。実生活の中での体験は、教科書の抽象的な内容を吸収(定着)させるための接着剤のようなものです