教育社会学者の舞田先生が統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。今回のテーマは就学前教育です。「幼児教育の無償化」などが話題になっていますが、我々デュアラーにとって切実なのは、まずは入れるところがあるかどうかですね。入りたい人が増えているのに、定員不足が一向に解消しない理由、更には、保育士の厳しい労働環境について、舞田先生が分析・考察しました。待機児問題はのど元を過ぎると忘れがちです。でもこの季節は初心に戻り、元当事者も改めて考えてみませんか?

子どもの6割以上が就学前教育を受けている

 こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。認可保育所の選考結果の通知が届き、保育への関心が高まっている時期ですので、今回は就学前教育の話をしようと思います。

 幼稚園や保育所の教育(保育)は、小学校に上がる前の教育、すなわち就学前教育とくくることができます。就学前教育は義務ではありませんが、幼稚園・保育所の在籍者は時代と共に増えていて、1960(昭和35)年では143万人だったのが、2016年では367万人にまで膨れ上がっています。

 少子化が進んでいますので、乳幼児人口に占める割合はうんと上がっています。図1は、0~5歳人口と幼稚園・保育園児の数を正方形の面積で表したグラフです。

 少子化により0~5歳人口は減っていますが、幼稚園児と保育園児は増えています。幼稚園・保育所の在所者の割合は、1960年では15.0%でしたが、2016年では61.1%です。今日では、乳幼児の3人に2人が就学前教育を受けていると。認可外保育所や認定こども園も含めると、在所率はもっと高くなります。

 幼稚園児と保育園児の数を比べると、現在では後者の方が多くなっています(昔は逆でした)。共働き世帯の増加により、早い年齢から長時間預かってくれる保育所への需要が増しているためです。それはあまりにすさまじく、皆さんも肌身でご存じのように、希望しても入れない「待機児童問題」が深刻化しています。