教育社会学者の舞田先生が統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。2018年の第1回のテーマは「生活保護とクルマの保有」です。生活保護を受けている世帯では所有するものにも制限を受けています。その一つが自動車。しかし地域によっては、自動車がなければ生活は成り立ちません。生活保護か自動車かを選ばなければならない現実は、子どもの貧困にもつながっているようです。今回も子どもを巻き込む社会問題に舞田先生が鋭く切り込みました。新しい年の初めに、子どもたちの将来について、考えてみませんか。

生活保護を受けるにはクルマを手放さなければならない

 こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。年明けから嫌な話ですが、生活保護費が大幅削減されるそうです。保護を受けていない低所得世帯よりも、生活保護世帯の方が多くもらっている……。こういうデータに飛びついてのことでしょうが、だとしたら浅はかです。

 下を向いてばかりいると(下に合わせてばかりいると)、全ての人の生活水準が競い合うようにして奈落の底に落ちていく。われわれは、こうした「負のスパイラル」に気づかないといけません。

 保護を受けられるのはまだいい方で、それに至るハードルが高い問題もあります。生活困窮(要保護)と認められても、「生活保護世帯は**の所有は認められない、処分しなさい」と、行政指導が入ることです。

 中学校3年生の時、社会科の授業で「生活保護世帯は、クーラーを持っていいか」という議題で議論した覚えがあります。今から四半世紀以上前(90年代初頭)の話ですが、現在ではクーラーは必需品でしょう。真夏の熱中症の死亡事故が問題化していますしね。

 しかし、今になってもビミョーなのが自動車です。交通の便が著しく悪い地域に住み、通勤に自家用車が欠かせない場合を除き、原則として、生活保護世帯は自動車の所有は認められないとのこと。この問題について、赤石千衣子氏が「子育て世帯を直撃する生活保護の自動車保有問題」という記事を書かれています。「保護かクルマか」の二者択一を迫られる、シングルマザーの悲劇です。

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