グローバル化が進み、多様な社会で生き抜く力が求められている今、日本の教育界にも新しい風が吹き込もうとしています。2019年4月、アメリカ発祥の教育メソッド「ドルトンプラン」を取り入れた私立中高一貫校が、日本で初めて開校します。さて、どんな学校なのでしょうか?

世界に広がるドルトン・スクール

 「ドルトンプラン」という言葉を聞いたことがありますか? 今からおよそ100年前に、アメリカの教育家であるヘレン・パーカスト氏という女性が、当時多くの学校で行われていた詰め込み型の教育に対する問題意識から提唱した、学習者主体の教育メソッドです。ドルトンプランを導入した学校は、パーカスト氏自らが1919年にニューヨークに設立したドルトンスクールをはじめ、現在はオランダ、韓国、台湾など世界に広がっています。この教育メソッドを取り入れた中高一貫校が、日本で初めて2019年4月に東京都調布市に開校します。その名は「ドルトン東京学園」。

 実はこの学校を作ったのは、大手予備校で知られる河合塾なのです。予備校と言えば、受験のための教育機関で、大教室で一斉授業を行うというイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?

 そんな大手予備校が作る新しい学校。教育界では早くも話題になっています。では、実際どのような教育が行われていくのか、開校前の学校を訪問し、そのビジョンを教えていただきました。

アメリカで生まれた生徒の自主性を尊重した教育メソッド「ドルトンプラン」

 ドルトンプランには「自由」と「協働」の2つの核があります。「自由」とは、子ども一人ひとりの興味を出発点に、自主性と創造性を育むもの。「協働」とは、様々な人々との交流を通じて社会性と協調性を身に付けるもの。どちらも多様化する社会で生きていくために必要なものです。

 それを伸ばす方法として取り入れているのが、「ハウス」「アサインメント」「ラボラトリー」と呼ばれる3つの柱です。学校教育といえば、これまでは、同学年の生徒が約40人集まるクラスに一人の先生が一斉授業を行うことが主流でした。でも、ここは1クラス25人の少人数制で、クラス以外に異学年のグループで編成される「ハウス」というコミュニティーがあります。異学年の生徒との交流によって、多様なものの見方や考え方を知るというのが狙いです。

 同校の授業や学習活動は、「アサインメント」(課題)を中心に進めていきます。各教科や校内行事などの学習活動のすべてにおいて、学びの目的・目標・テーマを生徒自らが設定し、取り組むことで、主体的な学びを導いていきます。

 アサインメントを実行する場所と時間が「ラボラトリー」です。生徒は自ら立てた学習計画に沿って、個人または少人数のグループで、学びたいことを究めていきます。授業内容を補うために使ったり、自分が興味を持ったことについて理解を深めたりと、この場所と時間を自由に使うことができます。

 こうした環境に身を置くことで、従来の受け身型の学習から、「どうしてそうなるのか?」「どうしたらもっとよくなるのか?」といった疑問や考えを持って、主体的な学びができる人に育てていきます。

ドルトン東京学園の校舎
ドルトン東京学園の校舎