中学受験をするなら、小3の2月から大手進学塾に通い、そこから3年間かけて受験のための勉強をするのが一般的です。なぜなら、大手進学塾には受験に必要なカリキュラムがそろっているからです。

 「しかしなかには、授業の中身やスピード、雰囲気などが合わず、大手進学塾に通うことがかえってマイナスになってしまう子もいます」

 そう話すのは、かつて大手進学塾の講師として、上位層から下位層まで幅広く指導した経験を持ち、現在は個人塾「中学受験 LOGIC」(東京都調布市)代表の松岡宏明先生。松岡先生は大手進学塾で働いていたときに感じたマイナス面やもどかしさを改善するために、5年前に自ら塾を立ち上げました。今年は6年生6人全員が、麻布中をはじめとする志望校に合格することができました。中学受験をするなら大手進学塾に通うのが王道といわれていますが、個人塾でも可能なのでしょうか? 大手進学塾・個人塾に通うそれぞれのメリット・デメリットと併せて、2回にわたって紹介します。

第1回 中学受験、大手塾でなくても難関校に受かる ←今回はココ
第2回 中学受験 大手進学塾で潰れ、個人塾で伸びる子とは 

タイミング悪いクラス昇降は成績が伸び悩む危険性が

 一般的に大手進学塾では、小3の秋から冬にかけて実施される入塾テストに始まり、定期的に行われるテストの成績に応じてクラス分けが行われます。なかにはクラスにおいても成績順で席が決められるところもあります。

「中学受験 LOGIC」代表の松岡宏明先生
「中学受験 LOGIC」代表の松岡宏明先生

 「こうしたシステムは、子どもたちに刺激を与え、それがバネになって伸びていく子には有効です。でも、すべての子にとってよいわけではありません」

 そう話すのは、東京都調布市で中学受験対象の個人塾「LOGIC」を運営している松岡宏明先生です。松岡先生はかつて難関校に多くの合格者を輩出している大手進学塾で塾講師をしていました。そのときに感じたのが、この成績順によるクラス分けへの強い反発です。

 「大手進学塾では、毎月のテストの結果でクラスを輪切りにします。そうすることで、子どもたちのモチベーションを上げるのが狙いです。上位クラスに入れれば、難関校への合格が近づくので、多くの親御さんはクラスが上がると喜びます。けれども、指導者の目線で見ると、『この子はまだ知識の定着が不十分だからクラスを上げないほうがいいのになぁ』『やっとやり方が分かってきたところだから、もう少し自分が教えていたいなぁ』と思うことがたびたびあります

 「実際、ムリなクラスアップによって、授業の難化や上位クラスの雰囲気になじめず、かえって成績不振になってしまう子がいます。そういう子は、次のテストで2クラス以上下がってしまうこともあります。すると、自信を失い、受験勉強がうまく回らなくなってしまう……。そういうケースをこれまで私はたくさん見てきました。そんな子どもたちを何とかしてあげたい。そう思っても、公平性を保つために、その子だけを救ってあげることはできませんでした。少人数制の中学受験塾を立ち上げたのは、こうした理由からです」

 「LOGIC」は、1クラス10人以下の少人数制クラスです。今年卒業した6年生は6名でした。志望校はみんなバラバラ。偏差値は30以上の幅がありました。

 それだけの学力差があるのに、同じクラスで学ぶことは可能なのでしょうか?

 「可能です。授業は基本授業を一斉に行います。その後、理解度が低い子にはもう一度説明をします。逆に理解度の高い子には発展問題を解かせ、そこで分からないことがあれば、質問に答えます。同じ授業で、同じ単元を学習しても、教え方や学び方は個々に対応します。そうできるのは、10人以下の少人数制クラスだからです