復帰後4カ月 頑張り過ぎのストレスで大量に嘔吐

 こうした経験はいち企業のトップとして、本当にリアルに経験して良かったと思っているのですが、働く乳幼児ママにかかる心理的プレッシャーの大きさを痛感させられる出来事がありました。娘が保育園に入ってから仕事の一線にも復帰でき、やはり自分は仕事が好きだという実感と、預けている時間に膨らむばかりの娘への愛しさと、公私ともに充実しているとしばらくは思っていたのです。仕事と育児のバランスはすぐには取れず、新米ワーママらしく奮闘していた生活が数カ月ほど続いたある日、予期せぬことが起こりました。

 よくある講演の仕事の日に、突然立つのもつらいくらいの吐き気に襲われてしまったのです。何とか仕事をこなしたものの、電車で帰ることはとてもできず、タクシーで横になって帰りましたが、支払いをするのもやっとの状態。フラフラとマンションのエントランスに入ったところで、倒れ込んでしまい、マーライオンのごとく連続嘔吐をしてしまったのです。全く予兆のない出来事でした。

 あまりに突発的だったので食中毒を疑いましたが、原因になるようなものは食べておらず、ついに緑色をした胆汁を吐いたときにハッとしました。以前にも経験があることだったからです。母を亡くしたときでした。あのときも四十九日が過ぎて少し落ち着いたと思った矢先に前触れなく胆汁が出るほどの大量嘔吐をしました。ズキズキと響く肋骨の痛みを感じながら「同じだ‥!」と、もうろうとする意識の中で思いました。

 あのときも一家の太陽である母を失った新たな生活の立て直しと、私事で周囲に迷惑をかけまいととにかく必死でした。今と同じです。今回は復帰後の仕事が難易度の高いプロジェクトであり、極度の寝不足を抱えながら頭を相当使ったことも影響したかと思います。「就業人」「母」「妻」「専門家(勉強)」加えて、女性であること。そのすべてにトップギアをかけてしまいました。今振り返ると復帰に加えて初めての保育園生活や3回食への移行など、公私ともに毎日が緊張の連続だったのでしょう。体調が最悪の日でも、授乳中は夜通しで寝ることは叶いません。結果的に身体が悲鳴を上げ、今自分は究極に無理をしているのだということを悟ることになります。

体の悲鳴を聞いて決めた3つのこと

 かくして私はマーライオンのように吐いた日に夫と話し合い、3つのことを決めました。

  1. 産む前と同じような仕事量をこなそうと思わないこと(仕事に割く時間を減らすこと)
  2. 自分の役割を人に託すこと(仕事と家事の両方、具体的には家事代行サービスの利用や時短調理サービスの活用)
  3. 夫婦で健康のためにできることをする(睡眠の質を上げる、ジムに通うなど)

 「自分の役割を人に託すということ=自分にはできない」と白旗をあげるわけですから、長女気質も災いして最初は強い抵抗がありました。赤の他人を家に入れることにも気が引けて、どちらも挑戦であったと思います。しかし、いざ始めてみるとなんと快適なこと! プロのハウスキーパーさんやシッターさんの仕事ぶりは参考になることばかり。体もだいぶ楽になりました。

 私は健康が専門なので、健康の立て直しは知識を総動員して行いました。まず、何といっても睡眠の質を見直すことです。それまで私も夫も寝つきがよく、特に睡眠に問題意識がなかったので、睡眠環境がベストかと聞かれるとそうではなかったと思います。ですが、育児はなんといっても体力勝負。疲れを抱えて毎日を過ごすのはつらいことです。夫も娘からの感染率100%という状況でしたので、まず睡眠から見直すことにしました。