寂しいけれど、働く親の負担になりたくない どちらも本音

── フウちゃんも、お母さんを責めているのではないんですよね。疲れて寝坊しているお母さんのために、朝食を用意してあげようとしていたら牛乳をこぼしてしまい、それをきっかけに思いが溢れ出てしまう。けなげだからこそリアルでした。

まつお 私もそうでしたが、子どもって、親にずっと一緒にいてもらいたいと思っている一方で、やっぱり困らせて親の負担にはなりたくない、親に生き生きと頑張ってほしいと思っているんですね。両方の気持ちがある、というのは私自身が感じていたことでした。

増井 編集者として伴走させていただきながら、私も子どもがお母さんを応援したい、と思ってくれている気持ちに改めて気づかされました。普段元気で楽しそうにしていても、どこかで寂しい思いを持っていることも事実なんだな、と思うと、それを忘れてはいけないなあ、と。わが子へのいとおしさも増しました。

── 仕事に子育てに頑張るお父さん、お母さんを心の中で応援しながら、子どもたちは外で日々頑張っている。忙しい毎日の中でもそのことは忘れずに、「いつもそばにはいられなくても大好きだよ」という愛の言葉を伝えながら、子どもに寄り添い、成長を見守りたいですね。

母からのメッセージ「好きな道で居場所を見つけた娘へ」

 今まで出版された娘の絵本は、実体験を通して描かれているものが多く、娘にとって、こんなことが記憶に残っていたんだなとうれしく思ったり、寂しい思いもさせていたんだなと感じたり、母としては、娘の心の中を覗いている感じがします。

 不登校の時期は、本人にとって、本当につらかったと思います。でもその体験があっての今の彼女だと思っています。

 これからも色々な体験をして感性を磨き、作品作りに生かしてほしいです。そして、いつか主婦となり、母となる日が来ても、好きな絵は描き続けてほしいと思っています。

 女性が仕事を持って子育てをするのは大変だと思いますが、子を想う気持ちがあれば、どこかで子どもも感じとってくれているのですね。

(取材・文/玉居子泰子 写真/品田裕美 構成/日経DUAL 加藤京子)

まつおりかこ

絵本作家・イラストレーター。1989年大分県生まれ東京都育ち。女子美術大学版画コース卒業。喜怒哀楽の表情が豊かな動物が特長で、見る人の気持ちを温かくする絵を描く。作品に『あめのひえんそく』『たからもののあなた』(岩崎書店)、『おふろだいすき! しろくまきょうだい』(教育画劇)、『いっしょにあそぼう いない いない ばあ!』『ねんねのじかん ねてるこ だあれ?』(共に永岡書店)、『レトリバーきょうだいのケーキやさん ロッタのプレゼント』(PHP研究所)