働くお母さんと子どもの愛と葛藤をテーマにした絵本『たからもののあなた』。この絵本は、共働き家庭で育ったまつおりかこさん(28歳)の原体験が描かれた作品。3歳の子を育てる担当ママ編集者と共に、温かい絵本の世界観をそのままに、リアルなシーンと母子の気持ちを丁寧に盛り込みました。「一緒にいないときもあなたのことが大好き、離れているときも忘れないで」というシンプルな思いは、働く親と子どもたちからの共感を呼び、発売直後から多くの読者の支持を受けています。前回は、働く親を持つ幼い子が感じるリアルな寂しさや切なさについて聞きました。後半では、思春期に大きな壁に直面したとき、自立する道を選んだときに支えられた働く両親とのエピソードについて詳しくお届けします。

自分で自分を責めた不登校時代 人生の模索期を両親は見守ってくれた

日経DUAL編集部(以下、──) まつおさんは、いつごろから絵本作家を目指したのですか?

まつおりかこさん(以下、敬称略) 本格的に考えたのは美大を卒業するときですが、絵本作家になりたいというよりも、ただ好きな絵をずっと続けたい、という気持ちが先にありました。それに気がついたのはやはり、中学生時代。当時、自分のことを色々と考え模索していました。

── 前回、中学校に行けなくなった時期があったとお聞きしました。学校に行きたいのに行けない……大変な時期でしたね。

まつお 原因は色々で一つではないのですが、受験をして頑張って入った学校だったのに、ある日からどうしても学校に行けなくなってしまった。両親にも申し訳なくて。毎日、自分で自分を責めていました。

── まつおさんのそんな様子を見て、ご両親も心配したことでしょう。

まつお 両親は学校に行けないことを否定したり、私を責めたりするようなことは一切せず、いつも話を聞いてくれていました。当時、親がどう思っていたか、改めて聞いたことはないのですが、「行けなかったら行かなくてもいいよ」というスタンスでいてくれたことはありがたかったです。

── まつおさんの意思を尊重し、わが子を守ろうとしていたご両親の愛情の深さを感じます。

まつお 母はとても明るくポジティブな人。姉も元気で生徒会長をしたりバスケ部の部長をしたりと前に出るタイプ。父もパワフルで、私だけが、ネガティブ思考というか。楽しくやっているけれど、おとなしくて、引っ込み思案なところがあるんです。だからポジティブな母のアドバイスが自分には当てはまらないということもありましたが(笑)、どんなときも親身になってくれた母は今も一番頼りになる相談相手です。「そばにいてほしい」と訴えたこともありましたが、心の奥底では、やはり親が仕事を持っていてくれてよかった、と思っていました。それに、仕事を持っていて、外で発散してくれたからこそ、私のことをおおらかに見守ってくれたのだとも思います。

(写真左)まつおさんの母親が着ているスーツは、『たからもののあなた』の中でフウのママが着ているスーツと同じデザインになっている/(写真右)どんなときも大好きな絵を描くことは続けていた
(写真左)まつおさんの母親が着ているスーツは、『たからもののあなた』の中でフウのママが着ているスーツと同じデザインになっている/(写真右)どんなときも大好きな絵を描くことは続けていた

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