「あなたは天が守ってくれる子どもだから」

山田 学校には来てくれなくても、職住一致の生活をしていたからでしょうか。「さみしい」と感じることはなかったですね。「あなたは天が守ってくれる子どもだから」と言うような親だったので、構ってもらえる時間は少なくても、いつも丸ごと包まれて見守られている感覚はありました

 同級生の中に僕と同じような家庭で育っている商店街の息子や娘が何人かいたことも、大きかったかもしれないですね。学校から家まで、商店街のアーケードを缶蹴りしながら帰る途中、通り過ぎる店先に立つおじさん、おばさんは皆顔見知りばかり。途中、肉屋さんに寄ってコロッケを買い食いして、「水ちょうだい」と言えばコップに氷たっぷりの水が出てくる。小学校に入る前は保育園に通っていましたが、親以外の大人が迎えに来ていたような記憶もあるんですよね。街全体に見守られて、僕は育ったのだと思います(下編へ続く)。

取材・文/宮本恵理子

山田敏夫
1982年熊本県生まれ。実家は熊本市内で100年続く老舗洋装店で、忙しく働く両親を間近で見ながら育つ中で独自の職業観を確立。大学在学中、フランスへ留学し、グッチ・パリ店で勤務。本場のものづくりに触れ、「メイド・イン・ジャパン」の服作りを目標に掲げる。卒業後、人材広告会社、アパレル系企画会社を経て、2012年、ライフスタイルアクセントを設立。工場直結型ブランド「ファクトリエ」を展開し、「汚れない白デニム(児島のずっときれいなコットンパンツ)」などのヒット商品を生み出す。これまで訪れたモノ作りの現場は600超。著書に『ものがたりのあるものづくり ファクトリエが起こす「服」革命』(日経BP社)。https://factelier.com/