「駒崎弘樹は日本一!」家の中に母が張り紙

駒崎 なぜか無条件で僕をベタ褒めするんですよ。どのくらいベタかというと、「駒崎弘樹は日本一!」とか書いた紙を家の壁に貼ったりするんです(笑)。「母ちゃん、恥ずかしくて友達を呼べないからやめてくれ」って言っても、「あんたは日本一なのよ。私がそう思っているからそれでいいのよ」と。教育の世界で最近重要視されている「自己肯定感の引き上げ」の行動だったといえば、そうかもしれません(笑)。モノをどんどん買ってもらうといった物質的な甘やかされ方はされませんでしたが、精神的な援助はあふれるほど受けていました。

―― 家の中に張り紙まで! 本当に愛されていたのですね。

駒崎 当時は「やめてくれよー」の一心でしたけれど(笑)、一周回って今は、「母ちゃん、ありがとう」という気持ちです。管理して型にはめようとする学校の先生に対して、僕が堂々と自己主張することができていたのも、自己肯定感の基盤を母が作ってくれていたからかもしれません

保育園時代の駒崎さん
保育園時代の駒崎さん

―― 「病児保育」というサービスを事業化しようと考えたのも、お母様の言葉がきっかけだったとか。

駒崎 そうですね。僕が学生時代に友人の起業を手伝ったりしながら、何か自分でも夢中になれる事業を始めたいと思っていたころ、母親から珍しく電話がかかってきたんです。当時、母はベビーシッターの仕事をしていて、楽しそうだったのですが、どうも声に元気がない。話を聞くと、「とても親しくしていたお客さんから『今後はお願いできない』と言われた」と。

 そのお客さんは双子を育てながら会社勤めをしていたママだったのですが、子どもたちが風邪をうつし合ってしまったので、看病のため1週間以上会社を休まざるを得なかったそうです。「発熱すると保育園は預かってくれないから、ママが会社を休んで看病していたのよ。そうしたら、会社が怒って事実上の解雇になってしまったんだって」