前回に続き、自宅マンションの1階にカフェをオープンした4歳と1歳の女の子のパパ、西晃彦さんのお話です。大学時代に始めた写真の世界にのめり込み、「写真が自分にとって最もやりたいこと。そのために必要な生活費はアルバイトで得る」と長く飲食店に勤務。次女が生まれたタイミングで思いがけず自分の店を持つ機会が訪れ、「料理も好きだし、せっかくだから今しかできないことをやろう」と一歩を踏み出しました。

 家事の分担方針は「できることをできる人がやればいい。できない人はやらなくていい」。家計管理も同じ発想で、西さんは「稼ぐけど浪費もする妻」を管理しています。

今回のDUALなヒーロー

 西晃彦(にし・あきひこ)さん。1982年生まれ、36歳。4歳と1歳7カ月の娘、妻と都内で4人暮らし。法政大学在学中から写真の世界にのめり込み、卒業後も飲食店のアルバイトで生活費を稼ぎながら、数カ月の撮影旅行→作品づくりを最優先した日々を送る。学生時代から交際していた現在の妻と同棲を経て2010年に28歳で結婚するも、その生活に変化はなし。2014年に長女が生まれ、会社員として働くのが好きな妻は仕事メーン、自身は家族の食事作りなど主な家事を担う夫婦体制が整う。2017年の次女誕生のころ、住んでいるマンション1階のジャズ喫茶が閉店することになったのを機に店舗物件を借り受け、オーナー兼店長として「cafe gharb(ガルブ)」を2018年5月にオープン。調理師免許も取得しながら長く飲食店で働いた料理の腕で、「おいしいごはんが食べられる喫茶店」として営業中。


夫婦で2人いるわけだから、より得意なほうがやればいい

 妻との育児・家事の分担を考えるときもそうですが、僕には「できることをできる人がやればいい。できない人はやらなくていい」という考え方が根本にあります。

 アルバイトでしか働いたことがない自分は、仕事において「社員との間には越えられない一線がある」と感じることはありました。

 飲食店でお客さんからクレームがあった際、肩書のない僕が説明をしても「店長か社員を連れてきてください」と言われます。社内で経理担当者に業務的な報告をするにも、「あなたじゃダメ。社員連れてきて」となります。アルバイトとして誠実に働いてきた自負はありますが、周囲は納得しません。

 社員を連れていくことで解決するなら、連れていけばいいだけの話ですよね。家事や育児の役割分担においても同じです。夫婦で2人いるわけだから、より得意なほうがやればいい

 うちの場合は、料理に関わる食材の買い物、調理、後片付けはほぼ僕がやります。妻は料理ができないわけではないけれど、日々の仕事と育児で「(作ることに対して)面倒、疲れている」という気持ちが勝ってしまう。

 食事にあまり興味がないから、おなかを満たせるならファストフードでいいじゃん!と、体に悪そうなものを食べることにストレスがありません。自分自身がそうだから、子どもにもインスタントのものを食べさせることに抵抗がないんですよね。

 僕はファストフードやインスタントをほとんど食べないし、好きじゃない。料理することにおっくうさもないから「だったら僕が作るよ」と決まっていきました。妻に対して「料理をして」と言ったことはありません。

 カフェの経営をする話が出たときも、家族のご飯を店で作れるのはいいなと思いました。子どもも妻も夕食は店で食べて、家に戻れば楽ですよね。実際にやってみると、1歳半の次女の食べ方がむちゃくちゃ散らかるので、営業中は無理でしたが(苦笑)。

 今は、店でサッと調理して自宅に運んだりしていますが、次女の年齢が上がって落ち着いて食べられるようになれば、店で食事もできると思っています。

夫婦の役割分担は「それぞれが得意なことをやればいい」と話す西さん
夫婦の役割分担は「それぞれが得意なことをやればいい」と話す西さん