そんな複雑な思いを抱えての、10日ぶりの仕事復帰でした。

「すみませんでした」と頭を下げる私に、みんなは「いいよいいよ」と言ってくれましたが、それでも休んでいた事実がなかったことになるわけではありません。どこかぎこちない空気はそのまま残っていて、それでも私としては、ただ謝ることしかできなかったんですね。

 そんなとき、20代のあるメンバーから言われたのが、「私は、浅井さんに謝ってもらいたくないんです」という一言です。

 ハッとしましたね。私はこのときまで気付かなかったんです。会社には私以外にも、いろいろな事情を抱えている人がいて、みんながそれぞれにチームとして働いているということ。そして、何より、同じチームで働く彼女たちにとって私は、自分が母親になったときの姿そのものなんですよね。その事実を、私はこの言葉によって初めて知ることになりました。

あえて気持ちを共有するから、心地よく働ける

 freeeには、「あえて、共有する」という行動目標があります。これは、言わなくてもいいと思っていることでも、あえて共有することで、仕事上のコミュニケーションがよくなり、意見の吸い上げや、意思決定のスピードも上がるという意図で掲げているものです。あえて共有することで、人間関係は深まっていくという考えが、その根底にはあります。

 そこで、天気やランチなどの無難な会話に集約されがちな社員同士の会話を深めるべく、毎週、マネジャーに自分の価値観や悩み、家族のことを話す「weekly 1 on 1」という時間を設けているんですね。

 ただ、私はそれまでは、そこで自分の子育てや母親として考えていることなどを語ることはしてきませんでした。やっぱり、子どもがいない人にはピンとこない話だと思っていたからです。