やりがいを持って働くと、母への見方も変わった

 私はその後、女性の転職をサポートするサイトの立ち上げを担うことになりました。「女性×働き方」という、自分の立場に近い人たちにサービスを届けることができるようになり、さらにやりがいを感じました。時短勤務でもサイトを軌道に乗せることができたことで、自信につながったんです。

 現在は部署も変わり、さらに女性の働き方に寄り添える仕事を担っています。ただ、以前のような無茶な働き方はもうしません。

 本当にその業務を自分がやらなければならないことなのかを常に考え、仕事の優先順位をつけてそれ以上の仕事は受けないし、他の人にお願いするようにしています。そのおかげで、本当にストレスなく働けるようになりました。

 今振り返って思うのは、「子どもを優先する」と決めていた当時の私は、育児を“隠れみの”にして、仕事に打ち込めない理由を子育てに転嫁していました。ママだから、子どもが小さいからといって、仕事のやりがいを諦める必要なんてない。そう思えていたなら、きっと、マミートラックに乗るようなこともなかったのだと思います。

 母の仕事に対する姿勢にも共感できるようになりました。母が私の前で仕事の愚痴を言ったことは一度もなく、きっと、母にとって教師は天職だったのだと思います。やりがいを持って働いていた母の姿は、潜在的な部分で、私のロールモデルとなっています。そうした母の背中を見て育つことができたことが、今はありがたいと思うんですよね。今度はそれを、私が子どもたちに見せていく番なのだと思います。

取材・文/日経DUAL編集部 武末明子 写真/坂齋清