まるで仕事から逃れるようにして入った産休・育休でした。仕事を離れ、子どもや家族のことだけを考えられる生活が始まると思うと、正直うれしかったです。育児に専念するため、もう仕事を辞めてもいいとすら思っていました。

 ただ、結論から言うと、育児だけに専念する生活は私にはできませんでした。昼夜もない息子との生活は、とにかく眠くて(笑)。私はいつの間にか、家からほとんど出なくなり、仕事から帰ってきた夫に、夕方に見ているドラマの再放送の内容をとくとくと話していたんです。そんなことを3日も繰り返したある瞬間にハッとして。「これではまずい!」と、気づいたんですね。働かずにいる自分の姿に、自分自身で怖くなってしまったんです。

 働き続けることの必要性を再認識したような気がしました。ですが、育休明けの私に用意されていたのは、以前のマーケティングとは違う仕事だったのです。

育休明け、自ら選んだマミートラック

 いわゆるマミートラックでした。ですが、今思うと、自ら選んだマミートラックですよね。私自身がどういう働き方をするべきか分からず、明確なビジョンを持っていなかったので、上司もどうしたらいいのか分からなかったのだと思います。私の仕事は、データ集計をしたり、上司の承認を代わりに行ったりすること。上司としては、時短勤務を希望する私に配慮して、アシスタント的なポストを用意してくれたわけです。

 それでも私は、「時短勤務なんだし仕方がない。子どもも小さいのだから、精神的な負担が少ない仕事で助かる」と考えていました。ただ、数カ月もすると、「これが、せっかく生まれたかわいい息子と離れてまでやるほどの仕事なのだろうか?」と自問するようになって。

 仕事にやりがいを求めないと決めてはいたものの、本当にこれでいいのかと揺れましたね。

仕事よりも優先してきた育児。息子の一言にハッとする

 当時は、「絶対に延長保育はしない」「できるだけ長く息子と一緒にいる」という育児優先のマイルールを自分に課していました。母と一緒にいたかった過去の自分を息子に重ねて、長く息子と一緒に過ごすことが最善だと思い込んでいたのです。

 目を覚まさせてくれたのは、息子の一言です。ある日、いつものように仕事を定時で切り上げ保育園へお迎えに行くと、息子から「もうお迎えが来ちゃった」と言われたんですよね。しぶしぶおもちゃの片付けを始める息子を眺めながら、私の頭の中には、「この子との時間を優先するために、仕事を切り上げているのにどうして⁉」という感情が湧き上がってきて。

 ただ、一方ではホッとしている自分もいました。息子は保育園を心から楽しんでいるんだ、と安心できたんです。

 その頃からです。「育児を優先するということは、長く一緒にいることではないのかもしれない」と思うようになりました。やりたくもない仕事をして、30分、1時間早く帰ってくるよりも、息子と離れている間、生き生きとやりがいを持って仕事をすることのほうが、ずっと重要なんじゃないかというように考えが変わったのです。