夫婦は共に働き、共に育児や家事をする――。この意識は、ここ何年かで若い世代を中心に随分と普及したのではないでしょうか。なのに、子育て世代がモヤモヤを抱えたままなのは、取り巻くルールが旧時代のままだから? この連載では、親になったからと受け身にならず、前向きに自分の人生を切り開こうとしている人を紹介していきます。一人一人の小さな変革でも、社会を変えるうねりになるかもしれません。

今回紹介する落合さつきさんは、20代の若者の就職支援を行う会社に勤める2児のママ。第1子を出産した8年前、社内で初めて産休・育休を取得しました。自身のキャリアのためにも、後に続く女性社員のためにも頑張りたいと前向きな気持ちで仕事に復帰したものの、仕事ではマミートラックに乗りそうになり、家庭では体の弱い息子の病院通いに明け暮れる日々。「ここまでして私は仕事を続けるべきなのか…」。そんな自問自答を乗り越えた日々を振り返ります。

今回のDUALなヒロイン

落合さつきさん。37歳。小学2年生の息子と4歳の娘、夫との4人暮らし。2010年1月から10月まで第1子の、2013年2月から11月まで第2子の産休・育休を取得。大学卒業後、テレビ制作会社を経て、25歳のときに若者の就職支援を行うジェイックに入社。入社以来、ほぼ一貫してキャリアカウンセラーとしてキャリアを積む。現在も時短勤務をしながら、就職支援講座の講師や求職者の対面カウンセリング、就職のフォローなどを行っている。


 今の会社で産休・育休を取ったのは私が第1号です。それもあって、最初は「出産したら辞めなければいけないかもしれない」という覚悟もしていました。でも、うちは社員の約半数が女性。私が辞めてしまっては他の若い女の子たちのモチベーションが上がらないだろうし、前例がないからといって諦めてしまっては何も変わらないと思い直しました。それで「絶対に復帰します!」と宣言をしたら、「復帰できるような環境を整えておくから、安心して休んでいいよ」と言ってもらえました。

 ただ、長男を出産して仕事に復帰すると、まず感じたのはどこか腫れ物に触るような周囲の気遣いでした

育休から復帰すると、「裏方に回っていいよ」

 私は出産前からキャリアカウンセラーという仕事を長く担当していて、今も時短勤務で続けています。学生さんやフリーター、既卒の方に対して当社の就職支援講座の説明をしたり、就職するまでのフォローやアドバイスをしたり。中でも私は人と話すのが好きなので、一対一のカウンセリングを中心にやらせてもらっています。

 もともと新卒で就職したのはテレビ番組の制作会社でした。やりがいのある仕事でしたが、事務系の職種でスキル面の成長をあまり感じることができず、25歳のときに「このまま5年後、10年後もここで働き続けるのはどうだろう」と、転職を考え始めました。

 将来のことを考え、思い切って営業職へキャリアチェンジしたいと思ったときに、今の会社が無料で営業のスキルやコミュニケーションを学べる講座をやっていることをネットで知りました。それで受講したところ、常務に「うちの会社に入らない?」と誘われたんです。当時はサービスを立ち上げたばかりのスタートアップの時期で、ここで実力をつけてキャリアアップを目指そうと入社しました。

 営業も少し経験しましたが、キャリアカウンセラーの仕事を始めてみると、人と会って話すことは楽しいし、私自身もエネルギーをもらえるので、すごくやりがいを感じるようになりました。ところが長男の出産後、職場復帰したときに「楽な仕事のほうがいいだろう」ということで、裏方の仕事に回ってもいいよと上司に言われたんです。

 もちろん好意からのことなのですが、「大丈夫?」「無理しなくていいよ」と気遣われ、それまでバリバリこなしていた説明会の講師も、もうやらなくていいから他の人のサポートをお願い、みたいなことも言われました。いわゆるマミートラックに乗ってしまった感じです

 それで、最初のうちは資料作りなどの補佐的な仕事をやっていたのですが、次第に「これって、子どもを保育所に預けてまでやる仕事かな?」と思うようになっていきました。