夫婦は共に働き、共に育児や家事をする――。この意識は、ここ何年かで随分と普及したのではないでしょうか。なのに、子育て世代がモヤモヤを抱えたままなのは、取り巻くルールが旧時代のままだから? この連載では、前向きに自分の人生を切り開いている人を紹介します。一人一人の小さな変革でも、社会を変えるうねりになるかもしれません。

 今回紹介する竹中紗弓さんは、ITベンチャーの人事部で働く2児のママ。25歳で第一子を出産。1年半の産休・育休を経て復職すると「自分は浦島太郎だと思った」というほど、社内は様変わりしていました。営業部で以前のような結果を出せないストレスと、発達に遅れのある長男に対する保育園との間に生じた不協和音――。精神的に追い詰められていったそうです。

今回のDUALなヒロイン

 竹中紗弓さん(たけなか・さゆみ)さん。1988年生まれ、30歳。5歳の長男と2歳の長女、夫と埼玉県で4人暮らし。⼩学生からフェンシングを始め、⾼校1年のときにはジュニアの日本代表として世界大会に出場。大学でもリーグ戦優勝などに貢献する。卒業後の2011年にITベンチャーのALH(株)に新卒で入社し、法人営業に配属。13年に結婚・出産し、1年半の産休・育休を経て、15年4月に復職。16年に現在の人事部へ移動し、同年秋に2人目の産休・育休を経て17年4月に復職。現在は時短勤務で、新卒採用や広報業務を担っている。


 小学校から大学まで、フェンシングというスポーツに身を投じてきました。練習すればした分だけ、確実に自分の実力となって成長できることが面白く、のめり込みました。

 新卒で就職先を考えたときも、フェンシングで得た経験から「頑張った分だけ、自分の力となって成長できる場所」を希望しました。大企業で何万人分の1人として働くよりも少人数の中で自分を見いだしたいと、ITベンチャーである今の会社で総合職を希望して入社したんです。

 やったらやった分だけ結果がついてくる営業職は、肌に合いました。

 ところが、産休・育休で1年半を経て復職してからは、うまくいかなくなってしまいました。夫に泣きながら相談するほど、あのときの自分は精神的に追い詰められていました……。

ITベンチャーで1年半の産休・育休後に復帰したら…社内が一変していた

 長男を授かったのは就職して3年目。法人営業の仕事を一通り覚えて、「さぁ、これから30歳まで頑張るぞ!」とビジョンが見えていたときだったので、びっくりしました。

 でも、授かってみれば、これも幸せなことですよね(笑)。若いうちに産んでおけば、10年後に子どもは10歳で私は35歳。別のキャリアも積めるだろうし、同世代の産休・育休が集中する時期に自分は第一線で活躍できそうとも思いました。一旦長期的に仕事を休むことに焦りはなく、すぐに切り替えることができました

 2013年に産休・育休を1年半取得し、2015年に復職しました。

 息子の保育園も決まって、育休明けで復帰してみると…覚悟していた以上に、会社の環境や仕事の進め方、取引先との状況などいろんなことが変わっていました。時代が変化するスピードが速くなっているのに加えて、まだ会社自体も若いですから、どんどん大きくなっていった時期。「こんなに休んじゃいけなかったんだ」とその場でがくぜんとするような、自分が浦島太郎になったようでした。

 育休を経て復職したケースが社内に少なく、復帰したママがいてもその情報は共有されておらず、私のような社員をフォローする体制も一切なかったんですよね。

「1年半の産休、育休から復帰すると、想像以上の社内の変化にがくぜんとしました」と話す竹中紗弓さん
「1年半の産休、育休から復帰すると、想像以上の社内の変化にがくぜんとしました」と話す竹中紗弓さん