ファイナンシャルプランナーの中嶋よしふみさんが、DUAL読者のお金に関する疑問やお悩みに答える本連載。今回のテーマは、子どもの大学費用に関わる「奨学金」です。将来にわたるまで多額の借金を抱えてしまうかも、と奨学金に対し漠然と不安を抱える人は多いでしょう。返済に困る可能性が高まる条件、借金の本来の意味、大学が都市部に偏在することが生みだす影響など、奨学金を取り巻く状況を上下2本の記事で詳しく分析していきます。「上」に引き続き、「下」をお届けします。

(上)奨学金は怖い? 返済に困る可能性が高まる条件
(下)低金利・長期返済の奨学金は良心的な「借金」 ←今回はココ

親の老後資金に直結する、子どもの大学費用

 子どもが大学に通う時期は親もすでに定年直前、場合によっては定年退職のタイミングとぶつかる人も多いでしょう。生活費も含めて500万~1000万円近い費用を全額親の負担で支払えば、老後資金は目に見えて減ります。子どもが2人、3人といればなおさらです。

 そこで教育費を奨学金の形で子どもにも負担してもらえれば、老後資金の貯蓄はかなり楽になります。毎月10万円ならば、4年間で480万円、子どもが2人いれば1000万円近い額になります。これが丸ごと老後資金の差となります。月に10万円も借りざるを得ないのは限られたケースだと説明しましたが、親が負担可能であっても老後資金の都合で借りることは何ら問題ないはずです。

 借金を子どもに背負わせるのはかわいそうと考える人もいると思いますが、子どもの視点から見れば老後資金が不足している親からお金を無心されるような状況のほうがよっぽど嫌でしょう。奨学金は長期の返済になりますから、毎月の返済も少額で済みます。

 子どもが奨学金を借りて自己負担にさせれば授業にも身が入りますか?といった質問を受けることもありますが、「そういうこともあるかもしれませんね」くらいの回答にとどめています。精神面や考え方、心構えは人によって大きく違うからです。多額の借金を背負ってもやる気の出ない人もいるでしょうから、赤の他人であるFPには回答できない質問です。

 したがって気分や心構えの話ではなく、老後に親の手元にいくら貯金が残るか、子どもが奨学金をいくら抱えるか、という「物理的な話」として奨学金や教育資金は合理的に考えていただければと思います。

 そういった視点で考えれば、低利で借りて長期でゆっくり返せばよい奨学金は極めて有利な条件であると言えます。20年間の固定金利が0.27%という数字は住宅ローンでもあり得ない低さです

子どもの大学費用に関わる「奨学金」は怖いモノ?
子どもの大学費用に関わる「奨学金」は怖いモノ?