子どもが奨学金を抱えていると結婚できないのではといった心配については、そんなバカなことを言う相手とは結婚しないほうがいいと個人的には思いますが、FPとしてのアドバイスは、奨学金は遊び目的でできた借金とは全く意味が違うこと、ゆっくり返済すれば毎月の負担は極めて小さいことなどを子どもや結婚相手に丁寧に説明すればいいのでは、といった回答になります。どうしても気になるのであれば、親に余裕のある場合に限って親が代わりに返済してもよいかもしれません。
 ※奨学金の返済を親が肩代わりする場合、贈与税がかかる場合があります。税金に関する詳細は税務署や税理士に相談をしてください。

 奨学金のテクニカルな説明はこれで十分かと思いますが、何となく納得できない人もいるかもしれません。借金は少ないほうがいい、できればしないほうがいい、それが正解・常識であるといつの間にか刷り込まれている人も多いからです。奨学金が過剰に悪者扱いされたり怖がってしまったりする人がいる理由は、借金の意味や目的が理解されていないからです。

借金の意味とは?

 シンプルに説明すると、借金の目的は「支払いのタイミングをコントロールすること」にあります。これは住宅ローンでもカーローンでもすべて同じです。

 住宅だと特に分かりやすいと思いますが、手元にある貯金だけで家を買える人はほとんどいません。奨学金も手元の貯金が足りなかったり、あるいは激減してしまったり、そういった状況を避けることに意味があるわけです。これはビジネス分野の言葉で「資金繰り」と言います。会計が得意な人ならばキャッシュフローと言えば理解していただけると思います。

 会社が潰れるときは手元のお金がなくなったとき、つまり資金繰りが止まったときです。これは家計でも同じです。そうならないために借金があります。お金を借りて手元に資金を残し、支払いができない状況を防ぐ……これが借金をする意味です

 過去の連載で書いた住宅ローンのアドバイスでも、無理に頭金を入れ過ぎたり繰り上げ返済をやり過ぎたりしないほうがいいといった話は何度も出てきましたが、根っこにある考え方は同じです。家を買う際にはほとんどの人がローンを組むのに、学費を払うときだけ奨学金を怖がるのは合理的ではありません。

 そして奨学金を借りようと借りるまいと、大学に通うのであれば学費は必ず払う必要があります。その時々の収入や手元の貯金を使って4年間で払うか、奨学金を利用して20年かけてゆっくり払っていくか、その違いでしかありません。これが「支払いのタイミングをコントロールすること」の意味です。利息は「ゆっくり払う」ために必要な手数料です。

 つまり使い道が学費であろうと住宅であろうと最終的には払わなければいけないものと考えれば、借金に良い・悪いといった性質はなく「ニュートラルな存在」です。