多額の奨学金返済を抱えるかどうかは「事前に」分かる

 以上のように考えると、奨学金で返済に困ったり自己破産に陥ったりしやすいケースは、上京して一人暮らしをしながら通学して多額の生活費がかかり、就職後も一人暮らしで返済をする人という、ある程度限定された状況であることが分かります。加えて、そういった状況になりやすいかどうかも事前に分かります

 つまり親が大学の選択肢が多い都市部に住んでいれば、在学中と就職後の両方とも一人暮らしになる可能性は(本人があえて選ぼうとしなければ)低いわけです。偶然、運悪く、想定外の状況で多額の奨学金返済を抱える可能性は極めて低いと言えます(逆に言えば地方在住で進学先が限られる場合は、苦しい状況になる可能性が高いと言えます)。

 自分が教育費や奨学金のアドバイスをするタイミングは相談に訪れた夫婦が家を買うタイミングです。まだ若く、子どもは未就学児で大学進学は10年以上先の話です。奨学金の不安は多額の借金であることに加えて、発生するかどうか分からないという面も大きいと思われます。

 ただ、すでに書いたように東京やその近辺で家を買う夫婦であれば、「首都圏で交通の便がそれなりにいい場所に家があれば、返済に困る状況にはまずなりません」とハッキリとアドバイスできます。この話をするだけでほっとした表情になる方は少なくありません。

――「下」編へ続きます。