経営者自ら3週間の長期リフレッシュ休暇を取って、カナダ・カルガリーへ中学1年生の息子と語学留学した翻訳会社エイアンドピープルの浅井満知子社長。日本人がたった一人という現地サマーキャンプで息子は大きく成長し、浅井さん自身も日常から離れてこれからのことを考える貴重な時間を過ごせたといいます。

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 働き方改革で経営者自ら3週間休みカナダ親子留学

100人中、日本人はたった一人の環境へ

 翻訳会社社長という職業柄、英語を生かしたキャリアを間近に見てきた浅井さん。

 自身の子どもに対しても、さぞ早くから英語教育を行ってきたのだろうと思えば、決してそうではなかったという。

 「お恥ずかしながら、息子が小さいときは今以上に仕事が忙しく、いわゆる幼児向けの早期教育を準備する余裕もなかったんです。耳に英語を慣らすことだけはやっておいたほうがいいと、日常的に家の中で英語での海外ドラマや映画を流すことは意識していました」

 また、浅井さんが語学の早期教育を急がなかったのには、一つの明確な理由がある。「真にグローバルな人材には単に英語を話せること以前に、自分の意見をきちんと言える“根本的なコミュニケーション力”のほうが重要だという考えを持っていました。それは繰り返し、息子に伝えてきたことでした」

 では、実際に行ってみての効果はどうだったのか。浅井さんは「初めはどうしようかと思った」と苦笑いで振り返る。

 自身が語学学校に通う間、息子は現地のカナダ人の子どもたちが通うサマーキャンプに参加。「大変な思いをしないように」と日本人の多い語学のレッスンに行かせる親が多いなか、それはかなりレアな選択だったという

 「息子はレゴや工作が好きだったので、『サイエンスキャンプ』という理科系のサマーキャンプに申し込みました。行ってみたら、100人くらいの生徒の中で日本人はたった1人だったそうで、英語もほとんど話せず初日はとても苦労したようで……。初日の夜、私が『現地の子どもたちの中にいきなり入るなんてすごいわね、って周りのお母さんたちが感心していたよ』と伝えると、『そうだよ! なんでこんなに大変なところに入れたんだよ!』と怒って大泣き。翌朝も泣いて『行きたくない』の一点張りで。私は『彼ならできる』と信じるつもりでしたが、かわいそうに思えてきて、さすがに心が折れそうになりました」