“付き添い役”として息子とカナダへ

 業務の効率化を進めた結果、仕事の質も向上した一方で、「短時間で集中して働くからこそ、心身を休めてリフレッシュできる長期休暇の確保が必要」と、浅井さんは考えた。日本の大半の職場がそうであるように、同社でも「1週間以上の休みは取りづらい」という雰囲気がまん延していた。

 制度上は取れるのに、なかなか取らない。それは「長く休んだら仕事が滞って顧客に迷惑がかかるし、かえって自分の首を絞める」と考える社員が多いからだ。この原因を解決するため、浅井さんは一つの業務を複数の社員が協力し合って担当するチーム制を1年前に導入。長期の休みを取っても、その間の業務をフォローできる体制を整えた。ところが……。

 「環境は整ったはずですが、それでもなかなか皆、休まない。ならばまずはトップである私が見本を見せてみようと、夏に1週間の休みを取る計画を立てることにしました」

 せっかく長い休みを取るのだから、ずっとやりたかったことをかなえる時間にしよう、と考えた浅井さん。日ごろから「仕事を理由に好きなことを諦めない貪欲な人生を送ってほしい」と社員に伝えてきた立場として、自らその実践を見せようという思いがあった。

 そこで思いついたのが、学生時代以来ずっと憧れていた“留学”を体験できる旅。日常会話レベルの英語力をブラッシュアップするために、海外で学ぶ機会をつくってみることに。「でも、この歳になって『一人で留学体験しに行きたい』とは夫に言いづらくて(笑)、中学受験を終えてホッとしたタイミングだった息子を主役にして、私は“付き添い”という形で語学学校に通う形にしました」