帰国後は外国人と話すことに抵抗がない

 8月の帰国から数カ月が経ち、日本での日常に戻った今、英語の勉強を継続するための時間はなかなか取れていない。でも、家族は8日間、自分は4日間のレッスンだったが、「一日中、英語漬けという環境を集中的に体験したおかげで、英語に対する向き合い方はかなり変わったと思う」と吉川さんは言う。

 一番の変化は「外国人と話すことに抵抗がなくなったこと」。月の半分を過ごす京都では訪日観光客も多いが、以前は、駅の改札などで困った様子を見かけても声をかける勇気を持てなかった。今では、迷わず「May I help you?」の一言が出る。

 もともと英語に前向きだった娘は、前よりも少し英語が好きになったようだ。思春期に差しかかった息子からは「行ってよかった」という明確な反応は特にない。だが、吉川さんはやはり家族みんなで留学旅行を決行してよかったと振り返る。

 「日ごろ仕事をしていて感じるのは、語学はあくまでツールでしかない。本当にいい仕事につながるコミュニケーション能力とは、相手の文化や生活背景をきちんと理解し、自分の文化も相手に伝えて、お互いに尊重し合える能力。子どもたちが大人になるころには翻訳テクノロジーはもっと進化して、単に言葉を置き換えるだけの語学力は必須ではなくなっているかもしれません。しかしグローバル化はますます進むはずなので、より重要になるのは、相手と違いを認め合える感性でしょう。様々な土地に実際に行って、いろんな文化に触れる経験を通じて、感性を磨いてほしいなと思います。そして、その違いを認め合う感性は、日本で暮らす中で生かしてほしいですね」

 目に見える風景や、肌で感じる温度、匂い。違いを五感で経験したことは、子どもたちの今後のコミュニケーション力の基盤をつくっていくはずだ。英会話のスキルを向上させるだけならオンラインで学ぶこともできるが、海外の現地に行くことで吸収できる学びは何倍も違うと、吉川さんは考えている。

 夏休みを利用しての親子語学留学を検討する際のアドバイスとしては「早めの計画がおすすめ」。

 「私はたまたま春の申し込みで間に合いましたが、人気のスクールはすでに埋まっていることが多いと聞きます。年末年始などに家族がゆっくり話せるときに『次の夏休みに、皆で留学してみようか』と決めておき、その前提で春休みの計画もバランスよく考えるといいのでは」

 吉川さんも、次は国や地域を変えての親子留学を検討中だという。

(文/宮本恵理子)