全く問題がない“完璧”な家庭はありません。子どもの成長とともに訪れる課題に全員が「チーム」として取り組み、自分たちらしい家族を形成すること──それが「ファミリー・ビルディング」の考え方です。幼児教育を通して6000人以上の子どもと接し、数多くの家庭をコンサルティングしてきた山本直美さんが、悩めるデュアラー世代へアドバイスします。前回「やんちゃに甘えん坊 タイプ別・男の子の育て方」に続き、今回のテーマは「女の子の育て方」。パワー全開男子に比べれば、体力的には育てやすいかもしれない女の子。先生や親の言うことをよく聞く優等生女子も目立ちます。一方で「口がたつ」タイプの子は「ああ言えばこう言う」で手を焼いている親御さんも多いよう。特有の「難しさ」を感じることも多い、女の子の育て方について、山本直美さんにアドバイスをもらいました。

◆山本直美さんの連載「山本直美のHAPPY ファミリー・ビルディング」も併せてお読みください!◆
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特有の難しさがある女の子は、母親の「映し鏡」?

 こんにちは。チャイルド・ファミリーコンサルタントの山本直美です。

 少しずつ秋が深まり、朝晩冷え込む日が多くなってきましたね。でも日中は日差しがあるとポカポカと気持ちのよい気候で、お散歩やハイキングに出かけたくなる季節です。

 前回の記事「やんちゃに甘えん坊 タイプ別・男の子の育て方」に続き、今回は「女の子の育て方」がテーマです。

 生まれたてのふわふわした赤ちゃんのころから、3~4歳を迎えるころまでの女の子は本当にかわいらしいですよね。パパやママが目に入れても痛くない、とおっしゃるのもうなずけます。でも、実は、長年たくさんのお子さんを見てきた中で感じているのは、か弱いだけの女の子はなかなかいない、ということです。もともと体が弱い場合を除いて、小さくか弱く見えるのは、幼児期の間の早生まれのお子さんか、子ども自身がそう見えるように振る舞っている場合くらい。実はとても芯が強くたくましい、というのが女の子の特徴です。

 前回、ママにとって理解不能な行動をとる男の子の子育てには、独特の難しさがあるというお話をしましたが、同性である女の子の子育てにもまた、特有の難しさがあります。

 それは、そのお子さん自身の持つ良さやかわいらしさを引き出し、時折出てくるツノを攻撃的に人に向けたりしないように育てることの難しさなのではないかと思います。

 男の子にとっては力のコントロールを覚えることが大切だったように、女の子にとっては、言葉のコントロールを覚えることがとても大切です。男の子は何か不安なこと(≒心安らかでいられないこと)が起こったときに、その気持ちを泣いたり暴れたり肉体的に表現することでぶつけてくることが多いですが、それを言葉でぶつけてくるのが女の子ですね。言葉も力と同じように、使い方を誤ると暴力になってしまいますが、そのことに無自覚でいると人を傷つけることにつながってしまいます。

 女の子のパパやママに「どんなお子さんになってほしいですか」と質問をすると、「思いやりのある優しい子に」という答えがよく返ってきます。そのためには、親自身が女の子にどんな言葉をかけるのか、ということを意識してほしいですね。

 発達心理学の観点から言うと、人は経験したことしかできないので、ママにとって女の子は、男の子以上に自分自身の鏡となってしまいがちです。

 2歳ごろになっておままごとをするようになると、ママがおうちで何をやっているかが、すぐに分かってしまうのですよね。そのため、特にしつけの場面においては、男の子に対してはどこか甘くても、女の子に対してはできていないことが気になり、厳しくなりがちなのがママの心理です。まずは、そういう心理が働いてしまうということを、ママ自身の意識の中に持っておけるといいですね。そうしないと、子どもができないことに対してつい厳しく注意してしまい、その結果、お子さんはお友達に自分が親に言われた言葉をそのまま使うようになってしまいます。

 女の子を落ち着いてよく観察してみると、いろんなことを理解して行動していることがほとんどです。パパもママも余裕のないときは、つい、感情的になって、きつい言葉をかけてしまうこともあるかもしれませんが、心の底では子ども自身も分かっているので、強い言葉で叱る必要はないのです。

 言葉を発するよりも、出かけた言葉を飲み込むほうが大変ですね。一番してはいけないのは、子どもが自分の言うことを聞かずに失敗したときに「ほら見てごらんなさい」などの捨てせりふを吐いてしまうことです。これをやってしまうと、お子さんの中にもどんどん意地悪な気持ちが出てきてしまいますから、心無い言葉をかけてしまうのならば、無言で見ていたほうがまだよいと思います。