「分かってくれない」と不機嫌な妻の気持ちが「分からない」夫

 なぜ、子育て期には夫婦仲が悪くなってしまうのでしょうか?

 子育て期のママは、育児、家事、仕事を両立するために毎日大変な日々を過ごされていることでしょう。一方のパパも、お仕事において責任が大きくなってくる時期。家事・育児をママと分担しつつも、仕事で結果を出さなければいけないプレッシャーがのしかかります。

 お互いに「一番の味方になってほしい」と思っているのに、気持ちのつながりを感じられないくらい、他のことでいっぱいいっぱい。
パートナーを思いやる余裕や余力がないという状況ではないでしょうか。

 そんな中、ママはパパに対して「なんで分かってくれないの?」と思い、パパはママに対して「なんで不機嫌なのかが分からない」と思っているということが、すれ違いの一番大きな原因なのではないかと思います。

 この気持ちのすれ違いが起こる背景には、この時期のパパとママの余裕のなさに加えて、精神状態が大きく異なるということがあります。まずはそのことを理解しておくことが大切ですね。

 ママにとって出産直後の子どもはまるで「自分の分身」のようなイメージです。子どもと同一化していた状態から少しずつ「衛星化」し、子どもを一人の人間として認めていく過程は、とても大きなことなんですよね。保育園や幼稚園のこと、お友達のこと、お稽古のことなど、ママは子どものことをあれこれ気にかけていることと思います。

 それをパパは「なんでそんなに小さなことを気にするの?」「そんな情報を得てどうするの?」と言ってしまいがちですが、まずはママのそういう姿勢を「子どもを大事に思っていることが素晴らしい」と認めてあげてほしいのです。大人から気遣われることで子どもは愛着や自己肯定感を育み、他者との信頼関係を結ぶことができるようになっていきますから、とても大切なことなのです。パパはぜひそうしたママの気持ちに寄り添い、伴走してあげてほしいと思います。

 一方でパパは、不機嫌なママを見るのが、本当に嫌だと思っているのではないでしょうか。出産してからどんどん強く、たくましく、時には攻撃的になってゆくママを見て、まるで別人と接しているような気持ちになっているのかもしれません。この心境の変化をママも理解してあげたいですね。

 ママは妊娠期から少しずつ母親としての意識が芽生えてきますが、パパが父親としての意識を持ち始めるのは、子どもが「パパがしたことに反応するようになってから」なのです。親としての意識の芽生えにはタイムラグがあるため、意識してすり合わせをしないと、どうしても気持ちのすれ違いが起こってしまいます。