起業を決めたら、最初にどちらを選べばいい?

 起業する際は、初めに個人事業主か法人かを選択することができます。

 どちらにメリットがあるかということから決断する方法もありますが、個人から法人に変更することも、法人から個人に変更することもできるので、まずは「起業した後の自分」を具体的に想像することから始めてみてはいかがでしょうか。

 個人事業主として起業した後に、法人に変更することを「法人成り」といいますが、法人に変更したときの主なメリットは次の通りです。

 家族従業員や家族役員に給与等を支払うことで、所得の分散を図りつつ、家族それぞれが給与所得控除を使って税金を節約することができる

 生命保険料を法人の損金とすることができ、これにより、役員の生存(死亡)退職金の資金、役員死亡後の借入金の返済資金をつくることができる

 法人で社宅を建築し、一定の安い家賃で役員・従業員に貸したり、固定資産税や減価償却費、修繕費、保険料等のランニングコストを法人経費とすることができる(役員退職時に退職金代わりに社宅を渡すことも可能)。

 法人が賃借した社宅を一定の安い家賃で役員・従業員に貸すことができる

 法人が車を所有し、自動車税や保険料、車検等のランニングコストを法人経費とすることができる

 出張旅費規程を作り、社長の出張日当を損金で落とすことができる。

利益が出たとき、なるべく節税するには?

 個人事業主も法人も、利益が出て税金を節約したいと思ったときには、次の4つの方法をとることができます。

 いずれも引退後や廃業に備えた退職金作りをしつつ、税金の節約ができる方法です。税金的なメリットはありますが、途中引き出しや借入の可否などは、制度によって異なるため、長期的な目線で検討しましょう。

 小規模企業共済

※詳しくはバックナンバー「老後不安に打ち勝つ! 『税金』を味方にする積立ワザ」の「フリーランス・自営業者は「小規模企業共済」参照

 確定拠出年金(個人型・企業型)

 中小企業倒産防止掛金

 中小企業退職金共済

赤字になったときの「繰り越し」と「地方税」

 赤字になったときのフォローも比較してみましょう。赤字が大きいときは法人の方が長く繰り越すことができるメリットがありますが、赤字でも必ず納めなければならない法人住民税均等割があります。

 起業した後は、「自分」という人間が商品ですから、信用や人脈を築くことが重要です。法人を作るほうが信用を得やすいという場合は、起業費用がかかっても法人のほうが事業がやりやすいでしょう。また、個人事業主でも法人でもどちらでもいいけれど、「代表取締役社長」という肩書を持つことで、事業により意欲的に取り組めるのなら、ソントクよりも自分のやりたい事業を実現するために必要な経費であり、投資ではないでしょうか。

 あなたが生み出す事業を子どもと同じようにすくすくと成長させるためにも、やりたい起業内容と、家族の事情にあった方法を選択してくださいね。

(監修:備順子税理士)