税務面でどちらが有利かは所得によって変わる

 事業形態によって、税務上の経費となる支出と、ならない支出があります。おおまかな考え方としては、個人事業主の場合は、個人の生活と業務の境目が明確でないものは、原則として税務上の経費にできません。

 一方、法人は事業主本人の給与が経費として認められるなど、個人事業主には経費にできないものが税務上の損金になる項目があります。ただし、しっかりとした経理処理を行う必要があります。

 DUAL読者は共働きですから、家族へ支払った給料が経費となるかどうかは現段階では考慮することは少ないでしょう。ただし、事業の状況によって二人の働き方や考え方に変化が出てきたときは参考にしてください。

 なお、表中の税率については、課税所得によって変わるため、どちらが有利不利かは変わります。一般的には、個人事業主としての所得が大きくなると、税率が低い法人に形態を変えることが多いようです。

「経費」の範囲はどこからどこまで?

 さて、税金の額が決まる過程では、法人も個人事業主もまずは収入から経費を差し引きます。「経費」でよく質問を受けるのが次のようなものです。

Q.自宅開業すると家賃は経費になるの?

 実際に事務所等として使用している割合に応じて、税務上の経費にすることができます。賃貸マンションなどの場合は部屋全体の床面積と、事務所として使っている部屋の床面積割合などによって、家賃や管理費用を按分するのが一般的です。

 持ち家の場合は固定資産税や減価償却費、火災保険料などの住宅を持つことで生ずるコストを合計し、その金額に事業用の床面積割合を掛けることで経費を計算します(個人事業主の場合)。

 個人の持ち家の一部を法人が借りる場合は、法人が個人に事務所家賃を支払うことができます。この場合は、近隣相場の家賃を参考に、床面積等に配慮して金額を決めます。

Q.住宅ローン控除を使っていても、大丈夫?

 住宅ローン控除は居住用部分にしか適用を受けられませんし、事務所として使用している割合が50%以上の場合はもともと住宅ローン控除を受けられません。

 なお、事業として使用する割合が建物全体の10%未満の場合は、建物全体を居住用とみなしてくれるので、事業用に使用する部屋の床面積を工夫すれば、100%住宅ローン控除の適用を受けることができます。

Q.携帯電話代も経費になる?

 仕事で使っている携帯電話なら経費になります。法人の場合は、法人名で契約しておきましょう。ただし、1台しかもっておらず、事務所用とプライベート用が共有の場合は、使用頻度や連絡先によって按分するのが原則です。

Q.友達とのカフェ代は経費になる?

 仕事の打ち合わせ、あるいは、仕事の営業としてのカフェ代であれば、経費になりますが、単純に友達と楽しくおしゃべりしたときのカフェ代や家族での食事などは、経費にはなりません。

 領収書の宛て名は、法人の場合は法人名で、個人事業主なら屋号(屋号がない場合は、個人名)で書いてもらいましょう。

 起業すると、「節税」という言葉に敏感になる方が多いのですが、「節税」はOKでも「脱税」は犯罪ですから、お気を付けくださいね。