少子高齢化、人権、子育て支援など、今日本の社会が直面している諸問題について、NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんが各界の専門家や政治家に切り込む本連載。今回は、組織・人材マネジメントに詳しい立教大学教授の中原 淳さんに、いまだに進まない女性活用の課題、解決策について聞きました。話題はヘルプシーキング、ワーママの上司は同僚をどうフォローすべきかなど多岐にわたり、下編では地域行事で味わった無力感についての告白も飛び出しました。現役パパらしく、共働き家庭の問題を踏まえつつ、社会全体を見渡した中原さんへのインタビューを上下2本の記事でお届けします。

(上) 日本のワーママ我慢せず「助けを借りる」行動が大事
(下) 持続可能な子育てには「ほどほど適当主義」がいい

地域活動から得るスパイシーなフィードバック

駒崎 育児に関わっていると自分にとってのコンフォートゾーンを出る修業の機会をたくさん与えられますよね。

中原 淳さん
立教大学経営学部教授。1975年北海道生まれ。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発・リーダーシップ開発について研究。『組織開発の探究』『女性の視点で見直す人材育成』(ダイヤモンド社)など著書多数

中原 子どもができて地域に出るようになってすごく感じるのは、「俺ってなんて無力なんだろう」という敗北感です(笑)。

 以前、運動会の出し物でやぐらを作ることになって、親たちが集まったんです。電気工事をやってるお父さんが「じゃあ、建てるか。電気つけるぞ」って言って颯爽と仕事をしている。本当にカッコいいんですよ。でも、問題は僕なんです。「で、中原さん、何できる?」「えーっと……、本なら書けます」「……そんなもんいらねーよ」。ですよね(笑)。学者なんて、まったく役に立たない。

駒崎 あー、僕もまさに同じです。「親父の会」でタコ焼きを出すことになったんですよ。タコ焼きなんて1回も焼いたことないわ~と尻込みしていたら「人手が足らないから来い」と言われ。仕方なくトライしたら、鉄板に油引かずに液を流し入れて超怒られて(笑)。

 「なんで油引いてねーんだよ!」「すいません」「当たり前だろ!」「最初にイントロ指導してくれないと分からないですよ!」と逆ギレする始末(笑)。

 新入社員になった気分で新鮮でした。経営者になって久しく、なかなか叱られる経験ってないですからね。肩書き外して何もできない自分に戻れるって貴重だなと思いました

中原 大人はたまには「スパイシーなフィードバック」をもらうことも必要なのです。たまには無力感を感じることもね

共働きはほどほどな適当主義とファミリーファーストが大事

駒崎 先生自ら自己開示いただき、ありがとうございました。さて、ヘルプシーキングに話を戻しますが、ワーママ自身がチーム育児のためにできることってどんなことでしょうか?

中原 自分の仕事のやり方を見直してみる努力はやはり必要だと思います。例えば、仕事を属人化しないように周囲が共有しやすいフォーマットを考えるとか。家庭でのパートナーに対する働きかけも諦めずにやっていく。家事もできるだけ相手に渡していけるといいですよね。

 ひとつ重要だと思うのは、家事をパートナーに任せるときには、任せる内容に関しては徹底的に任せるほうがいいと思います。中途半端に任せて、ちょいちょい口をだすよりは、がっつり任せる。その方が、夫婦のコンフリクトは減ると思いますね。

駒崎 確かに。わが家では料理と洗濯は妻、掃除・片付け系は僕と、完全にジャンルを分けて100%任せ合うようにしています。すると、経営者としては「100%任されたら300%で返そう」みたいな、やる気が出るわけです(笑)。権限委譲をしたほうが、男性は燃えるかもしれないですね。

中原 あと、ほどほどに適当主義でいることも大事かなと。僕は子育てに関しては、「チルドレンズ・ファーストではなく、ファミリーファーストであろう」と提唱しているんですよね。親がストレスを抱えてでも子どもだけの幸せを最大化する、いわゆる「チルドレンズファースト」ではなく、子どもも、親も、そこそこハッピーになる落としどころを探すということです。ファミリー全員がハッピーじゃなきゃ、と思います。

次ページから読める内容

  • ワーママがいる職場はカルチャーづくりが重要
  • わが子が大人になるころ、給与体系や組織の概念は大きく変化している
  • 女性、外国人、AI。職場のモザイク化は一層進む
  • 求められるのはリーダーシップ。小学生から育てよう

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