少子高齢化、人権、子育て支援など、今日本の社会が直面している諸問題について、NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんが各界の専門家や政治家に切り込む本連載。前回に続きサイボウズ社長の青野慶久さんを招いた本記事では、選択的夫婦別姓制度の立法化に向けての見通しを議論します。後半では、これからの時代の働き方についても熱く語り合いました。

最高裁で勝てば立法が動き出すはず

駒崎(以下、駒崎) 前回から引き続き、選択的夫婦別姓制度の実現に向けた青野さんの闘いについて伺っていきます。青野さんは後ろから刺されながらも、負けじと前に進んで行っているんですね。

青野慶久さん(以下、敬称略) はい。特に今回やっていることは、ゴールがとてもシンプルで、どれだけ批判されようとも、とにかく裁判に勝てばいいんですよ。作花知志弁護士がおっしゃるには「人権問題というのは多数決ではないんです」と。「マイノリティーであっても、ちゃんと憲法で保障された人権を訴えることができれば、それで勝てるんですよというんです」。すごくいいなと共感できました。

駒崎 今後はどんなふうに進んでいくんですか?

青野 これから、地裁、高裁、最高裁と進んでいきますが、できれば2~3年のうちに立法化まで持っていきたいですね。

駒崎 最高裁で勝てば、「じゃあ、法律を変えるか」と立法府が動きますからね

青野 ミラクルショットは、裁判を勝ち上がっている過程で、国会側が先手を打って立法化しようと動くパターンです。世論からの突き上げがあれば、それも可能かなと思っているのですが。

駒崎 これだけ長年女性が不便を強いられていて、現に男性も不利益を被っている「夫婦同氏制」という問題がある。それなのに法律は変わらず、問題を裁判に丸投げしている現状です。「そんな国会議員ってどうなの?」と、我々有権者が厳しい目を向けるといいんですよね。「女性が輝く社会だ」って言っている割に、「この問題については手付かずなの?」と。実際、なぜ国会議員は動こうとしないのだと思います?

青野 普通に考えると、自分の地場の選挙区の有権者から反発を食らうと思っているからでしょうね。

駒崎 でもこれってあくまで「選択的」なので、「全員別姓義務付け」じゃなくて、単に選択肢が増えるだけなんですよね。「夫婦同姓でもいいし、別姓でもいい」という、誰にとっても損はないことです。

青野 一番ストレートな方法は、皆さんの選挙区の政治家に「夫婦別姓を実現してくださいよ」とプレッシャーをかけることですよね。

駒崎 「別姓について、どう思う?」と意見を聞くだけでも違いますよ。

青野 政治家の考えも変わってきています。別姓に反対しているのは70代以上の高齢層。60代以下は賛成のほうが多いというデータもあるんです。なので、「このまま反対していたら、いずれ議員の席を失うよ」という空気になれば、態度はきっと変わります。

駒崎 期待できる得票率を動機付けに、彼らを動かすことはもっとできるはず。

サイボウズ社長 青野慶久さん
サイボウズ社長 青野慶久さん