「働く」の定義をしなおしたら、世界が180度変わる

編集部 最後に、編集部から質問です。「働き方改革」推進の中で社会に出た若者は、働く意欲そのものが低下しているのでは、という論調があります。実際、今年の新入社員を対象にした意識調査によると、「働き方は人並みでいい」と答えた人は62%で過去最高。「デートの約束がある日に残業を命じられたら断る」という人は31%と、これも年々増加しているそうです。

 これに関して、働き方改革先進企業のトップである青野さんのご意見をお聞かせください。

青野 まず、「働く」という意味の定義をし直すことから始めたほうがいいと思っています。会社に行って命じられた課題に取り組む行動を、僕たちは「働く」と考えがちですが、実は100年前の「働く」はそうではなかった。おじいちゃんが畑仕事している間に、おばあちゃんがかまどで飯を炊く。これ、どっちも「働く」です。現代は、「会社勤めをする」ことしか「働く」と捉えず、家事労働を「働く」と言わない。ゆがんじゃっているんですよね。

 そう考えていくと、もしかしたら残業を断ってデートに行くことも立派な「働く」かもしれない。だって人類共通の最重要課題は、子孫を残すことですよね。ということは、僕らの世代以前の人たちは長時間労働で会社に閉じこもって、人類の最重要課題をサボってきたんじゃないかという見方もできる。

駒崎 全く見え方が変わりますよね。

青野 「働く」の定義を変えた瞬間に、世界が180度変わるんです。僕も子育てをして初めて気づいたことが多いです。離乳食をお椀一杯食べさせるのに30分もかかることがつらくて、「なんでこんなに非効率なことをやっているんだ」と思いました。でも、ある日「おまえが育てているこの子が次の社会をつくるんだぞ」と、ふと、その仕事の重要性に気づかされたんです。次世代が育たなければ商売なんてできません。だから、僕たちは「会社で働く」以外の「働く」をもっと満たしていかないと、と思います

駒崎 非常にロジカルで、よく分かりました。訴訟の行方も見守り、応援しています。そして、一緒に世論を盛り上げていきましょう。ありがとうございました。

(文/宮本恵理子 写真/鈴木愛子)