「すごい才能がどこにいるかで、ジャンルのエネルギーが決まる」

 十数年前、立川談志師匠があるバラエティー番組でおっしゃっていました。「今は漫才やコントなど、お笑いのほうにみんな行く。もう落語には来ねぇな。才能のあるヤツが集まるところに、エネルギーがある。エネルギーがあるところに、才能があるヤツは集まる。それが世の常だ」と。

 あのときの談志師匠の言葉が、今になってものすごく胸に響いています。

 若い世代の活躍はうれしくもあり、危機感もある

 そんなウェブネイティブの若者たちのみずみずしい活動はうれしいし、わくわくします。自分よりも若い世代の活躍や、彼らが人気を勝ち得ていることに、敬意を表せる自分でいたいとも思っています。

 同時に、危機感も抱きました。新大陸のカリスマたちは、一様に若いのです。自分より一回り以下の年齢です。テレビを中心とした旧大陸で自分はまだ若手なのに、新大陸では完全に年をとっています。おじさんです。年を重ね、自分の世代がトレンドの中心でなくなることは、他の業界でも起こると思います。さぁ、どうしましょう?

 僕が思いをはせたのは、大航海時代のヨーロッパです。ポルトガルやスペインが、なぜ大航海時代の覇者になれたのか。それ以前のヨーロッパにおいて、ギリシャ、イタリア(ローマ帝国)、ドイツ・フランス(フランク王国)、イギリス(大英帝国)などから、圧倒的に後れを取っていたからです。ポルトガルとスペインは、既得権益の定まったヨーロッパでは勝てないと判断したのでしょう。アフリカ・アジア・アメリカ大陸を開拓するべく、海に出ました。

 ポルトガルはインド航路を開拓して新たな交易ルートを獲得し、スペインは西インド諸島に到着してアメリカ大陸に進出。圧倒的な財を手に入れました。地元ヨーロッパでは負けていたからこそ、勝てたのです。負けに甘んじず、外に目を向けたからです

 旧大陸で僕が置かれている状況は、まさにこれです。