ワンオペがペイするのは、一昔前の話

―― とても合理的な提案だと思います。読者から寄せられた感想の中で、意外だったものはありますか?

是枝 専業主婦の方で、家事・育児の対価を本書にならい機会費用法で計算してみたところ、未就学児期は「愛情の搾取」状態だったが、子どもが育ち、夫の年収が上がった現在ではむしろ「もらい過ぎ」なくらいになっているという方がいました。この方の夫は昔ながらの年功序列が残る企業に勤めています。

 一昔前までであればこのように帳尻が合うケースが多かったのかもしれません。けれど現実には、収入が上がり続ける男性は限られており、40~50代の女性の多くは家計を補助するために半ば仕方なくパートで働いています。

 また、一昔前までは若いころにがむしゃらに働かなくてはいけなくても、将来は高給が保証されていたので「ブラック企業」などと言う人はあまりおらず、ワンオペ育児も問題にされませんでした。

 近年、「ブラック企業」と「ワンオペ育児」が問題視されるようになった背景に、将来が保証されなくなった、という変化があると思います。長期的な保証がないなら、今、仕事や育児に対してきちんと評価してもらいたいし、人間的な生活を確保させてほしいという共通項があるのだと思いました。

―― 是枝さんご自身も1歳のお子さんがいる共働きパパです。どのように家事育児を分担されていますか。

是枝 家事育児の分担は、私と妻の得意分野や仕事の繁閑などを考慮しつつも、だいたい半々になるようにやっています。

 朝夕は大抵同時進行で一方が子どもを見ている間、一方が家事を進めています。朝の保育所の「送り」は私の担当ですが、ほぼ同時刻に通勤する妻がウェブ上の「保育園連絡帳」を書いています。 「迎え」と「呼び出し対応」をどちらが行うかは日ごとに互いの仕事の状況を確認して決めています。

 家事・育児の分担割合は時間で計ればほぼイーブンで、書籍でもほぼ五分五分で家事・育児をしていると書きましたが、負担感を考慮すると私が45%、妻が55%くらい。10%単位で四捨五入すればギリギリ五分五分というところでしょうか。

 食事作りや消耗品の管理など「考える家事」や「呼び出し対応」を行う回数などが妻にやや寄っているためです。 もっとも、ほぼ「五分五分」まで家事育児を分担して機動的に夫婦で調整ができると、1歳の子がいる中でも責任ある立場の仕事ができるようになります。 朝起こしてから夜寝かしつけるまでの一連の家事育児はすべて夫婦どちらでもできますので、どちらかが2~3日家を空けても家庭は回ります。

 夫婦の重要な仕事が重なると難しいときもありますが、必要なときに出張ができると担える仕事の幅とキャリアアップのチャンスが大きく広がります。 育児自体にも楽しみがありますが、自分と違う業界・職種で才能を開花させていくパートナーとともに「二人分の職業人生」を歩めるのはとても楽しいことですよ。

画像はイメージです
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(イメージ画像撮影/鈴木愛子)