男性たちよ、早く仕事を終えて家事・育児をすることは本当に無理なのか?

―― 出版後、読書会や講演で共働き夫婦や、将来、共働き子育てをしたいと考える層と意見交換をされてきました。

是枝 未就学児を育てる母親は、専業主婦であれ、働いている人であれ「割に合わなさ」を感じていました。この書籍で、その感覚が数字で裏付けられたことに納得感があった、という声を聞きました。

 独身男性からは、子どもができる前までであれば家事にそれほど時間をかける必要はなく、(ドラマに使われた)週35時間は「時間をかけすぎ」との声もあります。ただ、子どもができた後は家事・育児の時間が延びることはうすうす分かっており、本の中で示した妥当な分担割合を見て「こんなにやらなくてはいけないのか」というショックを受けていました。

 ネット上では、夫婦で家事育児を分担して共働きを目指すべきというのは、特に男性の長時間労働を前提とするような職場環境の中で「やりたくてもできない人のことを考えていない主張だ」との批判も頂きました。

 しかし、男性が早く仕事を終えて家事・育児をすることが本当に無理なのか、もう少し真剣に考えてもらいたい。育児したい男性に対する職場における嫌がらせ、いわゆるパタハラが社会問題になるずっと前から当たり前のように女性に対するマタハラはありました。働く母たちは会社とハードな交渉をしながら、そして時にやりたい仕事や職位を失いながらも、何とか家事育児の時間を確保してきたのです。もちろん、そのようなハラスメントが良いことだとは思いませんが、出世に響きそうとか上司に嫌な顔をされそうなくらいでビビッていては始まりません。

 本書では、育休を取ったり残業を免除してもらったりした結果、仮に夫の年収が2割減ったとしても、妻の収入で十分に補えることを示しています。