妻のワンオペ育児が経済的に肯定されるケースは1%もない

―― どのように計算されたのですか?

是枝 家事や育児の経済的対価の算定法には、いくつか代表的なものがあります。その一つが、同じ時間だけ外で働いたとしたら得られる賃金で評価する「機会費用法」です。 書籍では、ドラマと政府の報告書にある算出法に基づいて、専業主婦の機会費用を2011年の女性全体の平均時給である1383円として、家事育児の対価を試算しました。

 ただし、現在働いている女性は自分の「時給」が分かりますので、それを使って機会費用を算出するとよいでしょう。 例えば、年収500万円で年2000時間勤務しているならば時給は2500円になり、家事・育児の「単価」も平均的な日本人女性のおよそ2倍になります。

 共働き夫婦の「家事・育児分担比率」は、家計に入れる手取り収入と「家事・育児の対価相当額」の合計が夫婦で同等になるための家事育児の分担比率、つまり公平といえるような分担比率を算出したものです。試算の前提として、夫婦2人に子どもができる前までに、おおよそ年間2000時間(正社員の平均的な年間労働時間)働いていると仮定しています。

 専業主婦家庭を想定した試算表では、夫の収入が高いほど家事育児を負担する割合が少なくてもよいということになっています。ただし、夫の収入と妻の収入には正の相関がある(高収入の男性は高収入の女性と結婚しやすい)ため、妻のワンオペ育児が経済的に肯定されるのは相当なレアケース、1%もないものと思います。

―― DUAL読者の女性にも、ワンオペ育児に悩んでいる人が多くいます。

是枝 本書が示したフェアな家事育児分担割合は、夫婦の分担を改善するための出発点になると思います。女性の中には重い負担を受け入れることを「妻から夫あるいは子どもへの愛」だと考える人もいるかもしれません。ただ、その論理を通すと夫から妻への愛はマイナスだということになってしまう。 もちろん、一時的には夫婦の一方に負担が偏るような時期もあるかもしれませんが、長期的にどのようなキャリアや家庭像を描いていきたいのか、夫婦で話し合えればよいと思います。