待機児童問題解消のためには、働き方の見直しも必要


 前田正子先生は、ご自身、子育てしながら保育園問題に取り組んできました。

 「私自身が第二子出産後間もないころ、当時、市長だった中田宏さんにお声がけいただいて、副市長として待機児童問題に取り組みました。せっかく保育園の建設用地が見つかったのに、反対運動にあったこともあります。駅や街中から少し離れた園には空きがある一方、便利な場所にある園が満員で、ミスマッチに悩んだことも多々ありました。便利な場所だと鉄道の高架下だったり、オフィスビル内で音楽をかけられなかったり……。そういう中、色々なご批判も受けつつ、財政の許す限り、横浜市で保育園を増やしてきました」

 「私も、保坂区長と同じく、保育園を増やすことに加えて働き方の見直しも必要だと思います。特に母親だけでなく父親の働き方も一緒に見直すことが重要です。研究者として諸外国の制度を見る中で、参考になると思うのがドイツの制度でした。ドイツはかつて、出生率が下がった時期がありました。政策的に3歳まで育児休業を取れるようにしたことが原因です。雇用主は『3年も休むなら女性を雇いたくない』と思い、女性は『キャリアを失うなら子どもは持ちたくない』と思うようになってしまったのです。その後、メルケル首相がリーダーとなり、保育園の整備を進めるとともに、育児休業手当の制度を改革して実質的に育児休業を1年間とする一方で、父親の育休取得を推進しました。今、ドイツのパパ育休取得率は20%を超し、出生率も回復しています」

 「親が働き続けること、子どもを持ちやすくすること、を考えるなら、保育園を増やすことと一緒に、働き方を変えること、を求めていく必要があると思います。子育てに最も必要なものはお金では買えません。心置きなく遊べる公園、悩みを話せるママ友達――。こういうものが社会に普通にあるべきだと思いませんか」

 保坂区長、前田先生のお話を聞き、保育園を増やすために自治体が積み重ねてきた努力や工夫について確認することができました。また、希望する人が全員、保育園を使える社会にするためには自治体に頼るだけでなく、県や都、国の予算配分を子ども優先に変えることも必要です。そして、何より、子育てしながら持続可能な形で働けるよう、雇用主の責任を考えることも大事だと思いました。

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希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会
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