できることをやった自治体には、国や都から予算が下りることも


 このイベントには、自治体で保育園を増やすことに取り組んだ経験を持つ、世田谷区長の保坂展人さんと、前横浜副市長で甲南大学教授の前田正子さんが登壇しました。

 保坂さんは次のように話します。

 「区長就任以来、世田谷区内で保育園を60園、6700人分増やしました。おかげさまでこの4月、3歳児の待機児童はゼロになっています。保育園は園庭を含めると1000平方メートル程度の広い土地が必要で、区内でそういった土地を所有しているのは昔からの農家や駐車場を経営している方々。私は、こうした方々に『保育園へ土地を貸してください』と町中にポスターを貼ったこともあります(参考記事:「世田谷区長 4月までに1400人の保育枠を新設」)。加えて、都市部では土地が高いという課題もあり、保育園経営者にとって参入のハードルになります。そこで、年間約1500万円の運営費のうち、3分の2を区が負担することにしたら、保育園を経営してくださる方が増えました」

 「自治体としてできるだけのことをやってきました。今後は予算の壁にぶつかることが予想されます。世田谷区の年間予算3000億円のうち、現在、405億円を保育園に使っています。3年後にはこれが500億円に達します。限られた予算のすべてを保育園に使うことはできません。そんな中、塩崎厚生労働大臣(当時)にお会いする機会があり、実情をお伝えしたところ、国や都からも予算が下りることになりました。自治体としてできることをやったうえで、必要なことをお伝えすれば、助けてもらえると思います」

 「今後は、保育園という預け先の確保だけでなく、働き方の見直しも必要だと考えています。例えば夫婦交代で育休を取ったり、ワークシェアリングができるようになったりしたらいい。自治体がフルセットの保育園を作ること『だけ』に期待するのではなく、雇用主は男女ともに子育て世代が働きやすい環境をつくり、次世代を育てることに責任を持っていただきたい」