年が明けたと思ったら、もう1月も終わりですね。治部れんげです。今年もよろしくお願いします。2017年も、執筆や講演など女性政策に関する様々なお仕事をさせていただきました。

冬休みに、2018年に注力したい分野を考えていました。ひとつ、やりたいのは、「女性活躍」と「暴力の撲滅」を同時に進める必要性について発信することです。どちらも男女平等な社会をつくるために必要ですが、ともすると「活躍を目指す女性たち」と「人権を守る女性たち」の間には溝ができてしまいます。両者のギャップを埋めるような発信を心がけたいと思っています。今回は、それがどうして必要なのか書きます。

安心できる状態でなければ、人は自分の能力を発揮できない

 まず、身近な政策から見ていきます。私も委員を務めていた、東京都の男女平等参画審議会では、昨年(2017年)3月末に、男女平等参画推進総合計画を策定しました。これは東京都が男女平等を進めるための政策や目標などを様々な分野で決めた、ということです。2017年度から2021年度までの5年間が対象になっています*。

 男女平等参画推進総合計画は、「東京都女性活躍推進計画」と「東京都配偶者暴力対策基本計画」の2本立てになっています。

 前者の「女性活躍推進計画」には、女性の就労継続や仕事と育児の両立、主婦の再就職や男性の家庭参加、地域で活躍する女性の支援など、まさに「女性活躍」を進めるための政策や計画を記しています。

 そして後者の「配偶者暴力対策基本計画」には、配偶者からの暴力(いわゆるDV)、性暴力被害の実状や、被害者支援のための相談事業などについて記しています。

 当然のことですが、暴力を受けない、安心できる状態でなければ、人は自分の能力を発揮し活躍することはできません。つまり、女性の人権を守ることは、女性が活躍するための最低限の環境整備として必要と言えるのです。

 例えば職場を考えてみると、セクハラやパワハラ、マタハラといった人権侵害を「受けない」ことが大切ということは分かるでしょう。嫌がらせが常態化したような環境では、人は身を守ることや、嫌な環境に対処することで頭がいっぱいになってしまい、本来持っている能力を発揮することができません。被害を受けた場合に、適切な対応が取られることも、また、能力を発揮するために必要な環境整備と言えるでしょう。

 セクハラやパワハラについては、女性だけでなく男性も被害を受けることがあります。また、女性が被害を受ける様子を目の当たりにした男性が、そういう環境は嫌だ、と感じることも少なくありません。

 ある企業の従業員アンケートで「女性社員には、セクハラを笑って受け流してほしくない。見ていて気分が悪い」と記した男性社員の意見を目にしたことがあります。ハラスメントを受け入れてしまう職場環境は、女性だけでなく男性も居心地が悪く、モチベーションが低下するのです。

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