カンヌでも、性差別や性に基づく偏見を打ち破るクリエイティブを表彰

 続いて、視点を少し外に向けてみましょう。

 国際的な会議でジェンダー平等が注目される機会も増えました。世界最大級の広告イベント「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」**は、2015年に新しい賞「グラスライオン」を設立し、性差別や性に基づく偏見を打ち破るクリエイティブを表彰しています。

 2017年の「グラスライオン」グランプリを受賞したのは、金融機関ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズがウォール街に設置した少女の像“Fearless Girl”でした。この像は、国際女性デー(3月8日)の前日、ウォール街の象徴である雄牛像に向き合う形で置かれたものです。金融業界に女性リーダーが少ない実状を伝え、女性をエンパワーする目的がある、ということです。

 他にも、ブラジルの女の子にスポーツを推奨することで、様々な差別に打ち勝つ力を養うことを勧める広告などが「グラスライオン」を受賞していました。これらは、日本の文脈で言えば「女性活躍」を推進する内容と言えるでしょう。

 「グラスライオン」受賞CMには、明確に「女性に対する暴力の反対」を訴えるものもありました。Ticate(ティカテ)というメキシコ・ビールのCMです(ティカテは2010年、オランダ企業のハイネケンに買収されています)。

 このCMは、冒頭、マッチョな男性の映像が続きます。筋肉を誇示する人、ボクサー、肉体労働に従事する人を見せつつ「男らしさは、強さや勇敢さ、怒り、性的指向で決まるのではない」というナレーションが入り「男らしさは女性をどう扱うかで決まる」と続きます。

 その後、配偶者に暴力を振るわれたと思しき女性のイメージ映像が入り、そういうことをする人間は「男ではない」し、「ティカテのビールは、そのような人のためには、ない」とナレーションが続きます。
 
 DV加害者を「男じゃない」と断罪すると共に、消費者(=DV加害者)を拒否する強いメッセージを送っています。ビールという、大衆消費財で、このようなメッセージはリスクが大きいのでは……と思いますが、CMは好評だったそうです。お酒が入ることで、暴力が起きやすくなることを鑑みると、日本メーカーにも続いて欲しい方向性だと思いました。

 CMのラストシーンは、字幕で「メキシコ女性の3人に2人がDVの被害者です」という事実が伝えられます。DVは深刻な社会問題なのです。

 これら、ジェンダー平等を推進するCMとして表彰された作品群を見て思ったのは、海外でも「女性の活躍」と「女性に対する暴力の撲滅」は、大きな関心事である、ということでした。遡って過去の受賞作を見ていくと、中南米、中東など欧米先進国以外の地域で製作・放送されたCMの受賞例も、少なくありません。つまり、これは国際潮流と言えます。

 翻って日本では、どうでしょうか。

2017年の国際女性デー前日にウォール街に設置され、話題を呼んだ、少女の像“Fearless Girl”