日経DUALが創刊した2013年11月から続いてきた名物連載「トラの子、育ててます。」がこのたび終了となります。記念に、これまでの連載内容を振り返りつつ、金子達仁さんと八塩圭子さんにご夫婦で対談していただきました。常にお互い本音を“ぶつけ合い”ながら、どこか温かい愛情と信頼で結ばれているように感じるお二人のトークを5回にわたってお送りします。本文中にて、本連載のおすすめバックナンバーもご紹介します。ぜひ併せてお楽しみください。

(1) 八塩×金子対談 私たち夫婦“母2人・父2人体制”
(2) 本音をぶつける「交換日記」で、夫婦円満のススメ
(3) 夫婦は子育てのチーム。ケンカしている暇なんてない
(4) 出張前、妻を思い、牛筋大根を大量に煮ていく父親 ←今回はココ
(5) 一流のスポーツ選手は、圧倒的に父親の関与率が高い

子どもができて、仕事の「内容」も「スピード」もすべて変わった

日経DUAL編集部(以下、――) 金子さんは、以前は夜中じゃないと原稿は書かない。しかも、タバコを吸いながらでないとダメ、好きなヘビメタを聴きながら……などの仕事のマイルールがあったと思うのですが、そのときと比べると、働き方や原稿を書くスピード、仕事をする集中力って変わりましたか?

 

金子 圧倒的に変わりました。例えば、この間出した14万字の単行本は、実質1カ月ちょいで書きました。前は書き下ろしというと、「5年遅れ」とかが普通でしたね。

―― とてつもなくスピードアップしてますね。

 

金子 はい。やる気がもう違いますから。やらないと息子の飯代や学費が稼げないっていう。

八塩 書く内容も変わったんです。登場人物すべてに愛がある、みたいな感じで。ほとんど親目線ですよ。それをどう感じるかは、読者それぞれですよね。鋭い感じの切れ切れな作風が好きな方もいらっしゃいますし。とにかく仕事の質が変わったという気がします。

―― 子育てを通して、どっちが変わったかといえば、金子さんが変わったんでしょうか。

 

金子&八塩 そうですね。

金子 絶対、僕ですね。だってここ(自宅2階のリビング)で仕事してるんですから。前の職場は、地下の部屋でした。

金子さんがパパになって、どんなに変わったかはこの回で……

八塩 今、地下の部屋は広大な物置になっています。もったいなさ過ぎる。元は地下で彼が仕事をするということで、この家は設計されているんです。

金子 地下で仕事して、マージャンして、映画見て……。

八塩 夜通し、タバコを吸いながら原稿を書いて。

金子 明け方4時、5時ごろ上がってきて寝る。

―― 虎ちゃんが生まれてからは、この明るい部屋で書いている。…だから作風が変わったのかもしれませんね。

 

八塩 確かに、昼間、健全な環境の中で書いているからね。子どもが産まれる前は、「俺の人生観が変わるような出来事なんてもうない」と言い切っていたんですよ。良かったねえ、人間観が変わって。