日経DUALが創刊した2013年11月から続いてきた名物連載「トラの子、育ててます。」がこのたび終了となります。記念に、これまでの連載内容を振り返りつつ、金子達仁さんと八塩圭子さんにご夫婦で対談していただきました。常にお互い本音を“ぶつけ合い”ながら、どこか温かい愛情と信頼で結ばれているように感じるお二人のトークを5回にわたってお送りします。本文中にて、本連載のおすすめバックナンバーもご紹介します。ぜひ併せてお楽しみください。

(1) 八塩×金子対談 私たち夫婦“母2人・父2人体制”
(2) 本音をぶつける「交換日記」で夫婦円満のススメ ←今回はココ
(3) 夫婦は子育てのチーム ケンカしてる暇なんてない
(4) 出張前、妻を思い、牛筋大根を大量に煮ていく父親
(5) 一流のスポーツ選手は、圧倒的に父親の関与率が高い

「まあいっか、うちはパパがいてくれるから」

日経DUAL編集部(以下、――) 八塩さんが、週に2回、夜の番組を担当されていた間、月・火の夜はどんなタイムスケジュールだったのですか?

八塩さん(以下、八塩) 夜6時に出て10時半に帰宅する、という感じです。私の中で「夜の寝かしつけができない」というのが「ママとして、いいのかな?」という思いと、「パパに任せて大丈夫かな」という2つの思いがありました。子どもとの時間が減ってしまうことへの寂しさがあって。

 あのときは夜のレギュラー番組と同時に大学で教える仕事も始まったんですよ。でも、それができたのも「まあいっか、うちはパパがいてくれるから」という安心があったからですよね。出張もそう。例えば、夜まで子どもを預けたり、シッターさんにお願いしたりしてまで仕事ができるかというと、私にはハードルが高過ぎて、お仕事を断ったかもしれないですけれど、「パパがいてくれるから、いっか」と思うようになって。そこら辺から夫もかなり主体的に色々やってくれるようになりましたよね。

金子さん(以下、金子) 男が出張するときって、罪悪感がゼロの人がほとんどだと思うんです。僕は罪悪感を覚えるようになりましたよね。だから極端に出張を入れなくなりました。「(嫁さんが)一人で大変だよな」って思って。「虎に悪いな」ではない。(育児の大変さから)一人で逃げらんないのが一番つらいじゃないですか。息も抜けないし。以前、僕は1カ月ぐらいの海外出張をバンバン入れてましたけど、子どもが産まれてからは一切そういうことはやっていません。海外に行っても、一週間以内で帰ってくる。過去の自分からしたら、信じられないですね。

―― 過去の自分が見たら、今の自分に何と言うと思いますか?

金子 ……去勢されたなって(苦笑)。転向したな、とかですかね。

―― 失ったものもあったけれど、得たものもある、という感じですか?

金子 いや、失ったものは何にもないと思いますよ。最近僕読者に言われるのは、「子どもが産まれてから作風変わりましたよね」とはっきり言われますね。「すべてにおいて優しくなった」と。

 自分でも本当にそう思います。昔はとにかく人に噛み付いて、この人と刺し違えても……みたいな原稿を書いていましたけど、もう一切書けませんよね。その人にも子がいる、親がいるって考えちゃうというのもありますし。人の痛みが分からないで突っ走って、尖がっていて、それが評価されたというのが間違いなくあるのですが、今から思えば「若気の至り」としか言いようがないですよね。“安全装置のない核兵器”みたいなものだったと思います。

 今はもう過去の作風では書きたくない。一つ問題があるとすれば、尖がっていたときと比べて本が売れなくなったというのがあります(苦笑)。読んだ人の評価は高いんですけど、みんな、いいお話よりも、悪口が好きだったんだなと思いますし。