男性が女性の働き方に寄り添う。この「逆転の発想」が必要

 

 日本の男女間の賃金格差は、国際的に見ても大きいことが分かっています。女性管理職比率が低いことで平均賃金が下がっていることが、その一因とされる向きもありますが、やはり主要な要因として挙げられるのは男女間の平均勤続年数の格差です。見逃せないのは日本の女性の勤続年数は諸外国と大差ないことに比べて、男性の平均勤続年数の長さが突出して高いことです。

 今後の低成長期には、男性にとっても一つの会社の雇用に依存することはリスクであり、雇用のミスマッチを減らす意味でも雇用の流動化は望ましい面があるはずなのですが、なかなか男性の流動化は進みません。

 こういうと、経団連や連合から「冗談じゃない。長期雇用のおかげで熟練形成が可能になる」と反対されますが、もはや製造業中心の高度成長期のように、企業内での生涯にわたる熟練形成こそがキャリアの生産性を高めるという時代でもないでしょう。情報通信技術(ICI)の発展に伴い、AI化が急速に進んでいる昨今、企業内で形成されたスキルや技術が一夜にして陳腐化する場合も少なくありません。一部の限られたハイパーエリートならまだしも、平社員までがいまだに高度成長期時代の日本的慣行に基づき、職務を限定せずに、労多くして益の少ない長時間労働を強いられているのです。

 もはや、昔ながらの男性型の働き方に無理に女性を合わせようとするのではなく、むしろ特定の職務について責任を持つ「女性型の働き方」の比重を高め、「男性が女性の働き方に寄り添う」という発想の逆転が必要ではないでしょうか。日本の男性の雇用の流動性が高まり、女性との差が縮小すれば、男女の管理職比率の差も小さくなります。

 雇用の流動化が定着すれば「労働者の企業への忠誠心が失われる」という伝統的な批判があります。しかし、「(主観的な忠誠心で)会社のために働く」よりも、「自らの転職能力を高めるために、今の会社で実績を上げること」が結果的に会社のためにもなるのではないでしょうか。皆さんはどう考えますか。

* この記事は、2016年9月~2017年2月に開催された「労働法制の変化と『働き方』研究会」に基づくものです。なお、本記事で取り扱った論点については、八代先生の著書『働き方改革の経済学』(日本評論社)にも詳しく記されています。次回に続きます。

(ライター/砂塚美穂、協力/昭和女子大学ダイバーシティ推進機構、写真/iStock)