中学受験では、国語と算数に比べて、つい後回しになりがちな理科と社会。直前期に暗記をすればなんとかなると思っている家庭は少なくありませんが、それではこの2つの教科の面白さに気づくことはできません。

理科や社会の面白さは、私たちの生活と直接関わりがある点。特に小学生の理科は身の回りのことについて学ぶので、実体験と勉強で得た知識が一致することが多くあります。子どもは自分の体験で得た知識はそう簡単には忘れません。特に大好きな家族と過ごした時間は、記憶として深く刻まれます。

そこで、今回は「冬のお出かけ」を通じて得られる学びを社会編と理科編の2回にわたって紹介します。前回の社会編(「中学受験にも生きる! 冬のお出かけ学習【社会編】」)に続き、今回は理科編です。ナビゲーターは、中学受験情報局主任相談員で、理科を担当している辻義夫先生です。冬休みのお出かけシーンで、ぜひ取り入れてみてくださいね。

(日経DUAL特選シリーズ/2017年12月収録記事を再掲載します。)

冬の星座、日の出・日の入りの時刻、天気の変化……、空を見上げる習慣を

辻義夫先生
辻義夫先生

 12月13日、新聞やテレビのニュースでも話題になった「ふたご座流星群」。親子で見た人もいるのではないでしょうか。流れ星を肉眼で見られるのは、貴重な体験。そのときのお子さんの反応はいかがでしたか?

 「冬は空気が澄んでいるので、星がきれいに見えます。星の観察をするなら、冬の季節が断然おすすめです」

 そう話すのは、中学受験専門の個別指導教室SS-1で長年理科を教え、現在は中学受験情報局の主任相談員として、書籍やドリルの執筆や、中学受験セミナーで活躍している辻義夫先生です。

 辻先生はこう話します。

 「星の観察というと、望遠鏡が必要と思う親御さんもいますが、道具をそろえることよりも、まずは空を見る習慣を付けさせてあげることが大事です。子どもは自分の目の高さにあるものには気づきやすいけれど、それより上にあるものには気づかないところがあります。ですから、まずは『あ、あれ見て! きれいな星!』と親御さんが声かけをしてあげるといいですね。別に親が星の名前を知らなくてもいいんです。『あ~、きれいだなぁ~』とその時間を親子で共有できるだけでも、星に興味を持つきっかけになります」

 「もし、お子さんがさらに興味を持ったら、『あの星はなんていう名前なんだろうね』と一緒に調べてみるといいでしょう。今はスマホの無料アプリで星座に関するものもたくさんあります。中には『えっ!? これが無料でいいの?』と驚いてしまうような面白いアプリもあるので、ぜひ試してみてください」

 辻先生は、「空を見る習慣がある子は、理科に強くなる」と言います。

 「家族でどこかへ出かけるときは、お天気が気になりますね。テレビやスマホの天気予報を見れば、ある程度のことは分かります。でも、『今日の天気はどうかなぁ? これから崩れるのかなぁ?』と空を見て判断をする習慣をつけましょう。西の空に雲があったら、これから雨が降るかもしれないと予測することができます。天気予報で、写真の雲が西から東へ動くのを実際に体験するのです」

 「冬休み中に帰省や旅行で遠出をしたら、日の出・日の入りの時間を気にしてみましょう。東京では今の季節は16時30分ごろになると暗くなります。でも、関西地方に行くと17時くらいと少し遅い。九州地方に行けばもっと遅くなります。でも、北海道だと15時過ぎにはもう暗くなってきます。日本のような小さな国でもこんなに違いがあるのですから、『アメリカのような大きな国はどうなんだろうね?』とお子さんに問いかけてみてください。どんな答えが返ってくるでしょうか?」

 「太陽、雲、月、星などの空への興味は、親の声かけがとても大事です。実は、子どもは見ているようで、ぼんやり見ているだけで、誰かの声かけがないと、それを注意深く見ません。『あ、太陽が沈んでいくよ。きれいな夕日だね』と親がさりげなく声かけをしてあげると、『あ、ほんとだ、きれいだね』とじっくり見ます。また、空を観察することによって、時間の感覚も身に付きます」